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SF映画キャンペーンその③
とある宇宙飛行士の孤独とアイデンティティを描く、小説のような映画。絶対原作あるだろむしろ読みたいわと思っていたら、原作がないと知って驚いた。
(あらすじ)
宇宙部隊に所属する主人公は、成績優秀・冷静沈着ながらも、内面では過去と決別できずにいた。そんな中、軍からの司令により、消息を絶ったはずの父親とコンタクトを取るため、地球から月、月から火星への旅が始まる。
(感想)
正直、この3日間で見た映画の中でぶっちぎりで没頭した。
こんな染みる作品を今まで知らなかったのかと驚くレベル。
メンタルに異常をきたすと制御される世界(軍の規律)で、アイデンティティに欠陥を抱えながらも自分を偽って淡々と生きる主人公。だがずっと向き合わずにいた父親に接近することで、そして長旅の中で、己と向き合い、父親と出会い、対話し、どう生きるべきかを見つめ直す。
結局は父と子の話であり、この手のストーリー類型は他の映画や小説でも存在すると思う。でもその心理的距離や葛藤を宇宙を舞台に描くことで、うまく現実に落としているというか、極限状態だからこそ痛切に響くというか…、とにかく行く末を見守ってしまうんだよね。
偉大な父親は人類ではじめて海王星に到達した宇宙飛行士。そして海王星から帰ることなく、なぜか留まり続けている。そこにたどり着く道のりはとても孤独で、果てしない…。孤独な旅路は主人公の心理状態を蝕み、過去の過ちを延々とフラッシュバックさせる。このへんの描き方が、宇宙航海らしくていいなと思った。
なんというか雰囲気が『虐殺器官』とか、陰鬱な方のSFっぽくて、そういうところが小説あるだろうなと思わせた原因なんだと思う。まさかこんな重厚な作品だとは知らず、本当に没頭しました。大満足の2時間だった。
なお映画の時代設定はかなり近未来。
月に基地があり、火星くらいなら人類がなんとか行けるようになったくらいの未来。出てくるロケットも乗り物もSF!って感じではなく、現在NASAでこれ作成中ですと言われても納得するくらい現実味のあるデザインをしている。
月探査バギーでカーチェイスみたいなことしてるのはむしろ新しいなと思った。スターウォーズみたいな世界観の空中浮遊する乗り物でチェイスはSF映画ならどこでも見れそうだけど(トロンみたいなやつ)、科学館に展示されてそうな乗り物でバトルしてる絵面は新鮮だった。同時に、そんな乗り物で攻撃し合っている絵面にショックを受けていて、宇宙開発って平和の象徴みたいなもんだと思い込んでいた自分に気付かされた。人類が宇宙に進出したら、いずれは月の治安も悪くなるのは当然だろう。そんなふとした気づきに、なんとやく世界はどんどん良くなるだろうなと思っていた昔の幻想を否定されたときの気持ちを思い出すなどした。
シリアスの植え付け方がすごいよな、この作品。
そして宇宙ならではの映像美も素晴らしい。
冒頭の主人公落下シーンで、眼下に描かれる地球の美しさに引き込まれた。冒頭からやばかったんだ、この映画。
そして最後は地球に帰還して、人から手を差し伸べられて(孤独が終わりを告げて)ホッとするエンドなのだが、このとき「帰ってきたんだ…」と思った気持ちは、きっと主人公とリンクしていたと思う。心理状態の描き方マジで好きだなぁ…
重厚な映画なので気軽に「また観たいー!」とは言えない作品だけど、心に残った作品としては数えていいと思う。間違いなくこの3日間で見たやつのなかでは刺さった。文学的で良かった。
こんなん観ちゃったら次なにを観たらいいんでしょうね…
とある宇宙飛行士の孤独とアイデンティティを描く、小説のような映画。絶対原作あるだろむしろ読みたいわと思っていたら、原作がないと知って驚いた。
(あらすじ)
宇宙部隊に所属する主人公は、成績優秀・冷静沈着ながらも、内面では過去と決別できずにいた。そんな中、軍からの司令により、消息を絶ったはずの父親とコンタクトを取るため、地球から月、月から火星への旅が始まる。
(感想)
正直、この3日間で見た映画の中でぶっちぎりで没頭した。
こんな染みる作品を今まで知らなかったのかと驚くレベル。
メンタルに異常をきたすと制御される世界(軍の規律)で、アイデンティティに欠陥を抱えながらも自分を偽って淡々と生きる主人公。だがずっと向き合わずにいた父親に接近することで、そして長旅の中で、己と向き合い、父親と出会い、対話し、どう生きるべきかを見つめ直す。
結局は父と子の話であり、この手のストーリー類型は他の映画や小説でも存在すると思う。でもその心理的距離や葛藤を宇宙を舞台に描くことで、うまく現実に落としているというか、極限状態だからこそ痛切に響くというか…、とにかく行く末を見守ってしまうんだよね。
偉大な父親は人類ではじめて海王星に到達した宇宙飛行士。そして海王星から帰ることなく、なぜか留まり続けている。そこにたどり着く道のりはとても孤独で、果てしない…。孤独な旅路は主人公の心理状態を蝕み、過去の過ちを延々とフラッシュバックさせる。このへんの描き方が、宇宙航海らしくていいなと思った。
なんというか雰囲気が『虐殺器官』とか、陰鬱な方のSFっぽくて、そういうところが小説あるだろうなと思わせた原因なんだと思う。まさかこんな重厚な作品だとは知らず、本当に没頭しました。大満足の2時間だった。
なお映画の時代設定はかなり近未来。
月に基地があり、火星くらいなら人類がなんとか行けるようになったくらいの未来。出てくるロケットも乗り物もSF!って感じではなく、現在NASAでこれ作成中ですと言われても納得するくらい現実味のあるデザインをしている。
月探査バギーでカーチェイスみたいなことしてるのはむしろ新しいなと思った。スターウォーズみたいな世界観の空中浮遊する乗り物でチェイスはSF映画ならどこでも見れそうだけど(トロンみたいなやつ)、科学館に展示されてそうな乗り物でバトルしてる絵面は新鮮だった。同時に、そんな乗り物で攻撃し合っている絵面にショックを受けていて、宇宙開発って平和の象徴みたいなもんだと思い込んでいた自分に気付かされた。人類が宇宙に進出したら、いずれは月の治安も悪くなるのは当然だろう。そんなふとした気づきに、なんとやく世界はどんどん良くなるだろうなと思っていた昔の幻想を否定されたときの気持ちを思い出すなどした。
シリアスの植え付け方がすごいよな、この作品。
そして宇宙ならではの映像美も素晴らしい。
冒頭の主人公落下シーンで、眼下に描かれる地球の美しさに引き込まれた。冒頭からやばかったんだ、この映画。
そして最後は地球に帰還して、人から手を差し伸べられて(孤独が終わりを告げて)ホッとするエンドなのだが、このとき「帰ってきたんだ…」と思った気持ちは、きっと主人公とリンクしていたと思う。心理状態の描き方マジで好きだなぁ…
重厚な映画なので気軽に「また観たいー!」とは言えない作品だけど、心に残った作品としては数えていいと思う。間違いなくこの3日間で見たやつのなかでは刺さった。文学的で良かった。
こんなん観ちゃったら次なにを観たらいいんでしょうね…
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