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SF映画キャンペーンその③
とある宇宙飛行士の孤独とアイデンティティを描く、小説のような映画。絶対原作あるだろむしろ読みたいわと思っていたら、原作がないと知って驚いた。
(あらすじ)
宇宙部隊に所属する主人公は、成績優秀・冷静沈着ながらも、内面では過去と決別できずにいた。そんな中、軍からの司令により、消息を絶ったはずの父親とコンタクトを取るため、地球から月、月から火星への旅が始まる。
(感想)
正直、この3日間で見た映画の中でぶっちぎりで没頭した。
こんな染みる作品を今まで知らなかったのかと驚くレベル。
メンタルに異常をきたすと制御される世界(軍の規律)で、アイデンティティに欠陥を抱えながらも自分を偽って淡々と生きる主人公。だがずっと向き合わずにいた父親に接近することで、そして長旅の中で、己と向き合い、父親と出会い、対話し、どう生きるべきかを見つめ直す。
結局は父と子の話であり、この手のストーリー類型は他の映画や小説でも存在すると思う。でもその心理的距離や葛藤を宇宙を舞台に描くことで、うまく現実に落としているというか、極限状態だからこそ痛切に響くというか…、とにかく行く末を見守ってしまうんだよね。
偉大な父親は人類ではじめて海王星に到達した宇宙飛行士。そして海王星から帰ることなく、なぜか留まり続けている。そこにたどり着く道のりはとても孤独で、果てしない…。孤独な旅路は主人公の心理状態を蝕み、過去の過ちを延々とフラッシュバックさせる。このへんの描き方が、宇宙航海らしくていいなと思った。
なんというか雰囲気が『虐殺器官』とか、陰鬱な方のSFっぽくて、そういうところが小説あるだろうなと思わせた原因なんだと思う。まさかこんな重厚な作品だとは知らず、本当に没頭しました。大満足の2時間だった。
なお映画の時代設定はかなり近未来。
月に基地があり、火星くらいなら人類がなんとか行けるようになったくらいの未来。出てくるロケットも乗り物もSF!って感じではなく、現在NASAでこれ作成中ですと言われても納得するくらい現実味のあるデザインをしている。
月探査バギーでカーチェイスみたいなことしてるのはむしろ新しいなと思った。スターウォーズみたいな世界観の空中浮遊する乗り物でチェイスはSF映画ならどこでも見れそうだけど(トロンみたいなやつ)、科学館に展示されてそうな乗り物でバトルしてる絵面は新鮮だった。同時に、そんな乗り物で攻撃し合っている絵面にショックを受けていて、宇宙開発って平和の象徴みたいなもんだと思い込んでいた自分に気付かされた。人類が宇宙に進出したら、いずれは月の治安も悪くなるのは当然だろう。そんなふとした気づきに、なんとやく世界はどんどん良くなるだろうなと思っていた昔の幻想を否定されたときの気持ちを思い出すなどした。
シリアスの植え付け方がすごいよな、この作品。
そして宇宙ならではの映像美も素晴らしい。
冒頭の主人公落下シーンで、眼下に描かれる地球の美しさに引き込まれた。冒頭からやばかったんだ、この映画。
そして最後は地球に帰還して、人から手を差し伸べられて(孤独が終わりを告げて)ホッとするエンドなのだが、このとき「帰ってきたんだ…」と思った気持ちは、きっと主人公とリンクしていたと思う。心理状態の描き方マジで好きだなぁ…
重厚な映画なので気軽に「また観たいー!」とは言えない作品だけど、心に残った作品としては数えていいと思う。間違いなくこの3日間で見たやつのなかでは刺さった。文学的で良かった。
こんなん観ちゃったら次なにを観たらいいんでしょうね…
とある宇宙飛行士の孤独とアイデンティティを描く、小説のような映画。絶対原作あるだろむしろ読みたいわと思っていたら、原作がないと知って驚いた。
(あらすじ)
宇宙部隊に所属する主人公は、成績優秀・冷静沈着ながらも、内面では過去と決別できずにいた。そんな中、軍からの司令により、消息を絶ったはずの父親とコンタクトを取るため、地球から月、月から火星への旅が始まる。
(感想)
正直、この3日間で見た映画の中でぶっちぎりで没頭した。
こんな染みる作品を今まで知らなかったのかと驚くレベル。
メンタルに異常をきたすと制御される世界(軍の規律)で、アイデンティティに欠陥を抱えながらも自分を偽って淡々と生きる主人公。だがずっと向き合わずにいた父親に接近することで、そして長旅の中で、己と向き合い、父親と出会い、対話し、どう生きるべきかを見つめ直す。
結局は父と子の話であり、この手のストーリー類型は他の映画や小説でも存在すると思う。でもその心理的距離や葛藤を宇宙を舞台に描くことで、うまく現実に落としているというか、極限状態だからこそ痛切に響くというか…、とにかく行く末を見守ってしまうんだよね。
偉大な父親は人類ではじめて海王星に到達した宇宙飛行士。そして海王星から帰ることなく、なぜか留まり続けている。そこにたどり着く道のりはとても孤独で、果てしない…。孤独な旅路は主人公の心理状態を蝕み、過去の過ちを延々とフラッシュバックさせる。このへんの描き方が、宇宙航海らしくていいなと思った。
なんというか雰囲気が『虐殺器官』とか、陰鬱な方のSFっぽくて、そういうところが小説あるだろうなと思わせた原因なんだと思う。まさかこんな重厚な作品だとは知らず、本当に没頭しました。大満足の2時間だった。
なお映画の時代設定はかなり近未来。
月に基地があり、火星くらいなら人類がなんとか行けるようになったくらいの未来。出てくるロケットも乗り物もSF!って感じではなく、現在NASAでこれ作成中ですと言われても納得するくらい現実味のあるデザインをしている。
月探査バギーでカーチェイスみたいなことしてるのはむしろ新しいなと思った。スターウォーズみたいな世界観の空中浮遊する乗り物でチェイスはSF映画ならどこでも見れそうだけど(トロンみたいなやつ)、科学館に展示されてそうな乗り物でバトルしてる絵面は新鮮だった。同時に、そんな乗り物で攻撃し合っている絵面にショックを受けていて、宇宙開発って平和の象徴みたいなもんだと思い込んでいた自分に気付かされた。人類が宇宙に進出したら、いずれは月の治安も悪くなるのは当然だろう。そんなふとした気づきに、なんとやく世界はどんどん良くなるだろうなと思っていた昔の幻想を否定されたときの気持ちを思い出すなどした。
シリアスの植え付け方がすごいよな、この作品。
そして宇宙ならではの映像美も素晴らしい。
冒頭の主人公落下シーンで、眼下に描かれる地球の美しさに引き込まれた。冒頭からやばかったんだ、この映画。
そして最後は地球に帰還して、人から手を差し伸べられて(孤独が終わりを告げて)ホッとするエンドなのだが、このとき「帰ってきたんだ…」と思った気持ちは、きっと主人公とリンクしていたと思う。心理状態の描き方マジで好きだなぁ…
重厚な映画なので気軽に「また観たいー!」とは言えない作品だけど、心に残った作品としては数えていいと思う。間違いなくこの3日間で見たやつのなかでは刺さった。文学的で良かった。
こんなん観ちゃったら次なにを観たらいいんでしょうね…
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SF映画キャンペーンその②
静かに泣ける映画だった…………
(あらすじ)
地球でたった1人生き残った男が、地球の現状を伝えるために帰還中の宇宙飛行士たちと交信を試みる。
(感想)
昨日の映画(パッセンジャー)がシナリオの行く末で楽しませるエンタメ寄りだったのに対して、この映画は映像美や雰囲気で心に染みさせる「作品」だなと思った。だってシナリオはもはや何かを解決するとか達成するとかそういう次元じゃないんですよ。もう地球は壊滅的なことになってしまっている。それは変えようがない。男にできるのは、少しでも希望を繋ぐことだけ。
ストーリーは北極の観測所で交信を試みる男の過酷な生活パートと、地球がそんなことになってるとは少しも知らない宇宙飛行士たちの日常パートが交互に展開されて進む。正直、宇宙飛行士パート要るか?と思って観ていたけど、最後まで観ると彼らのことを知れて良かったなと思う。ちなみに地球で具体的にどんな厄災があったのかの説明は最後まで無い。でも、それが気にならないくらい登場人物たちの心理描写で満足させに来てるとは思う。
個人的に1番よかったなー!と思ったのは、宇宙飛行士たちが宇宙船を直すシーン。
というかそもそも、SF映画観よう!って思ったきっかけが宇宙ロケットの本を読んだからなので、SF映画で宇宙船のデザインを観るのが楽しいんですよね。昨日の映画も宇宙船の感想ばっか書いてしまった。
この映画の宇宙飛行士たちが乗っている宇宙船はさすが「NASA」という設定になっているだけあって、近未来じみたワールドシップとは全然違う。科学館で見た実在のロケットや宇宙ステーションを彷彿とさせるリアリティのあるデザインだった。反射素材の胴体に、折りたたみできるパラボラアンテナ、推進エネルギーをキャッチしてそうな巨大な網と、なんか「どの部分が何を司っているのか」がなんとなく分かる構造だった。この宇宙船の移動距離もパッセンジャーに比べたら現実的(太陽系内惑星への移動)だしね。そういう目線を持つようになれたのは本のおかげ。そしてその目線で見る宇宙ものはめちゃくちゃ楽しい。
宇宙船の修理シーンは「こんな構造になってるんだー!」と宇宙船を存分に観察できた。地球にいる男が過酷な旅路を歩んでいるからこそ、鮮明で好奇心をくすぐる宇宙船細部の映像が癒しだった。まぁそのすぐあとに宇宙船パートも絶望に叩き落とされるんだけどね!!
シナリオは別に何も起こらないとか書いたけど、緩急はしっかりあって、ほっこりからのハラハラも多数。ちゃんと物語に集中させる効果があります。
現実的なロケットが出てくる映画もなかなか面白いなと思えた。またSF映画を摂取したい。
静かに泣ける映画だった…………
(あらすじ)
地球でたった1人生き残った男が、地球の現状を伝えるために帰還中の宇宙飛行士たちと交信を試みる。
(感想)
昨日の映画(パッセンジャー)がシナリオの行く末で楽しませるエンタメ寄りだったのに対して、この映画は映像美や雰囲気で心に染みさせる「作品」だなと思った。だってシナリオはもはや何かを解決するとか達成するとかそういう次元じゃないんですよ。もう地球は壊滅的なことになってしまっている。それは変えようがない。男にできるのは、少しでも希望を繋ぐことだけ。
ストーリーは北極の観測所で交信を試みる男の過酷な生活パートと、地球がそんなことになってるとは少しも知らない宇宙飛行士たちの日常パートが交互に展開されて進む。正直、宇宙飛行士パート要るか?と思って観ていたけど、最後まで観ると彼らのことを知れて良かったなと思う。ちなみに地球で具体的にどんな厄災があったのかの説明は最後まで無い。でも、それが気にならないくらい登場人物たちの心理描写で満足させに来てるとは思う。
個人的に1番よかったなー!と思ったのは、宇宙飛行士たちが宇宙船を直すシーン。
というかそもそも、SF映画観よう!って思ったきっかけが宇宙ロケットの本を読んだからなので、SF映画で宇宙船のデザインを観るのが楽しいんですよね。昨日の映画も宇宙船の感想ばっか書いてしまった。
この映画の宇宙飛行士たちが乗っている宇宙船はさすが「NASA」という設定になっているだけあって、近未来じみたワールドシップとは全然違う。科学館で見た実在のロケットや宇宙ステーションを彷彿とさせるリアリティのあるデザインだった。反射素材の胴体に、折りたたみできるパラボラアンテナ、推進エネルギーをキャッチしてそうな巨大な網と、なんか「どの部分が何を司っているのか」がなんとなく分かる構造だった。この宇宙船の移動距離もパッセンジャーに比べたら現実的(太陽系内惑星への移動)だしね。そういう目線を持つようになれたのは本のおかげ。そしてその目線で見る宇宙ものはめちゃくちゃ楽しい。
宇宙船の修理シーンは「こんな構造になってるんだー!」と宇宙船を存分に観察できた。地球にいる男が過酷な旅路を歩んでいるからこそ、鮮明で好奇心をくすぐる宇宙船細部の映像が癒しだった。まぁそのすぐあとに宇宙船パートも絶望に叩き落とされるんだけどね!!
シナリオは別に何も起こらないとか書いたけど、緩急はしっかりあって、ほっこりからのハラハラも多数。ちゃんと物語に集中させる効果があります。
現実的なロケットが出てくる映画もなかなか面白いなと思えた。またSF映画を摂取したい。
2016年のSF映画。
読んでた本で紹介されてたので気になってネトフリ加入してまで観た。
(あらすじ)
移住先の惑星に移動中のコロニーシップ。
コールドスリープで移動するはずが、1人だけ目を覚ましてしまう…。
(ネタバレ感想)
主人公の行動が倫理的にヤバいので賛否を呼ぶ作品だと思うが、ぶっちぎりで《雰囲気が良い》ので、もうストーリーとか気にならないんだよね…!!!
最新のSFって感じがする。コロニーシップのデザインはじめ、ビジュアルが洗練されている。限られた食料の質素な食事、星々が輝くプール、宇宙船の窓から見える星空が動いていること(シップが回転することで重力作ってるからね)、別に目新しいアイデアじゃないんだろうけど、そのどれも映像が綺麗で見入ってしまう。
そしてBGMが良すぎるんだよな…!
神秘的で近未来な雰囲気を作るのに最高のBGMだった。ぜひ音楽にも注目して観てください。
ストーリーは納得できない人もいるかもしれないけど、そもそも主人公がいなければ乗客全員亡くなってたわけで、つまり主人公が罪を犯さなければ誰も救えなかったわけで、結果的に見たら主人公を責めることは出来ないよねと思う。そして主人公には責任を取って最後まで彼女と付き合ってほしい。そうなってくれたんだろうなと思わせる終わり方なのも良かった。
まぁ、そもそも運行計画にイレギュラー想定しとけや!!と思わずにはいられないけど。
とにかく現実を忘れ、宇宙を旅している気分になった。
それだけでこの映画を見る価値が大いにあったと思う。
素敵な体験をありがとう。
読んでた本で紹介されてたので気になってネトフリ加入してまで観た。
(あらすじ)
移住先の惑星に移動中のコロニーシップ。
コールドスリープで移動するはずが、1人だけ目を覚ましてしまう…。
(ネタバレ感想)
主人公の行動が倫理的にヤバいので賛否を呼ぶ作品だと思うが、ぶっちぎりで《雰囲気が良い》ので、もうストーリーとか気にならないんだよね…!!!
最新のSFって感じがする。コロニーシップのデザインはじめ、ビジュアルが洗練されている。限られた食料の質素な食事、星々が輝くプール、宇宙船の窓から見える星空が動いていること(シップが回転することで重力作ってるからね)、別に目新しいアイデアじゃないんだろうけど、そのどれも映像が綺麗で見入ってしまう。
そしてBGMが良すぎるんだよな…!
神秘的で近未来な雰囲気を作るのに最高のBGMだった。ぜひ音楽にも注目して観てください。
ストーリーは納得できない人もいるかもしれないけど、そもそも主人公がいなければ乗客全員亡くなってたわけで、つまり主人公が罪を犯さなければ誰も救えなかったわけで、結果的に見たら主人公を責めることは出来ないよねと思う。そして主人公には責任を取って最後まで彼女と付き合ってほしい。そうなってくれたんだろうなと思わせる終わり方なのも良かった。
まぁ、そもそも運行計画にイレギュラー想定しとけや!!と思わずにはいられないけど。
とにかく現実を忘れ、宇宙を旅している気分になった。
それだけでこの映画を見る価値が大いにあったと思う。
素敵な体験をありがとう。
惑星探査の一言にロマンを感じる人間は全員プレイするべきゲームランキング第1位
私はこのゲームをパッケージの雰囲気だけで買って、前情報は一切シャットアウトしていたので、いざスタートして「一人称視点なの!!???」と声に出して驚いた。そんな状態でも没入に遜色なし、ロマンの詰まったゲーム。
以下ネタバレありまくり感想。
一人称視点すら知らずにプレイを始めたので、これが単純な探索アクションゲーじゃなく「ループもの」なのも勿論知らなかった。探索してたらいきなり閉館間際みたいな音楽が鳴り始めて、謎に焦ってたら視界が真っ白になるんだもの、訳が分からないにもほどがある。分からなすぎて怖かった。そしてスタート地点で目が覚めて、ようやくシステムを知る。
初めて経験することはなんでも怖い。
初めて太陽が爆発するのをちゃんと見た時は怖かったし、初めて量子の石を見た時も不気味というか怖かった。アンコウなんて以ての外である。さらに、ブラックホールから果てしない宇宙に放り出されたときは絶望したし、迷路の先に広大な地下都市を見つけた時も何か出てくるんじゃないかとびくびくした。巨人の大海では気象の荒さに、何かの拍子で即死するんじゃないかと思った。
恐怖は知的好奇心と表裏一体。知らない惑星に行くことはびくびくするが、この先に何があるのか知りたいから行くのだ。このゲームのホラゲーじみた演出(ささやかなBGM、不気味な物体、一人称視点)は、探索のドキドキを演出するのに最適だったなと思う。
そして回数を経るごとに、危険をうまく乗り切れたり、理屈が分かって恐怖しなくなったりする。
そしてすごいなと思ったのは、最後まで自分の装備のレベルアップを必要としないこと。大海のコアとか、量子の月とか、「まだ今の装備じゃたどり着けない」と思っていたところは実は自分をレベルアップする必要は全くなく、全て行き方の問題だった。ループものは常に初期装備ではじまる。得られた知識だけで戦っていく「プレイヤーとしてのレベルアップ感」が本当に楽しい。私はいまこの宇宙で冒険してるぜと思えた。
ゲームの大筋の内容は、自分の種族より前に存在していたらしい知的生命体の痕跡を探して、彼らに何があったのかを解析すること。その解析はやがて、なぜループしているのかの説明にも結びついてくる。
ただまぁ、結構説明が不親切だなとは感じた。どんな情報を得たかはゲーム内で記録されていくし要約してくれるけど、じゃあ次に何をしようかというのはプレイヤーが自分で考えなきゃいけない。探索したいだけならそれでもいいのだが、「エンディングに行くにはどうしたらいいんだ…」と思うこともあった。普通にネットの攻略に頼った。先人の知恵を借りるのがテーマのゲームだから(?)、この不親切さはむしろそれを推奨しているような気さえする。
というかアンコウ対策はマジで苦戦した。
攻略がなかったら詰んでた。先人の皆さんありがとうございます。
特にグッときた点としては、やっぱりエンディングの演出かな。最後のミッションからエンディングが流れるまでの流れが初めて見るパターンで新鮮だった。
このゲーム、辿り着くとこまで辿り着いたら、最後を見届けるかどうかはプレイヤーの選択で進んでいく。滅びを先伸ばして永遠にキャンプファイアしていてもいいし、仲間と話していてもいい。タイミングは私に委ねられている。そこに流れる雰囲気は意外と温かく、諦めがあり、そして悲観的ではない。「終わりを受け入れる」ためのエンディングだと感じた。
太陽はもう寿命を迎えて、滅ぶのはもう決まってる。そんなものは変えられない。だけどまぁ、それでいいんじゃない? 知りたいことは全て知ったし、好きなだけ冒険した。キャンプファイアを囲んで音楽を楽しめた。好きなだけマシュマロを焼いた。手は尽くした。終わってしまうのは悲しいけど、もう「やることはない」んだ。このゲームはこれから終わるんだ。もしかしたら終わりの後に新しい始まりがあるかも。だったら、さぁ次に進もう。
プレイヤーがそういう気持ちになるのを待って、最後の崩壊が訪れる。全ては終わる。スタッフロールが流れる。
永い永い時が流れたあと、新たな宇宙がまたはじまる。
このエンディングがね……めちゃくちゃ雰囲気よくて、『ゲームが終わる』たったそれだけなのに、大感動してしまった。胸に染みた。シナリオでもキャラへの感情移入でもなく、雰囲気でここまで泣かせにくる完成度、とんでもないね。
なんだこの心に残るゲームは。
そりゃCG酔いするし怖い箇所たくさんあるし操作性もシナリオも不親切で攻略をググらなかったら詰んでたけど、全て許せるくらい「ゲーム体験のクオリティ」が勝つ! プレイヤーの体験性をがっつり重視してるところが本当に良かった。いい経験になりました。
ちなみにDLCも購入済み。
DLCに何が含まれてるのは全く知らないが、「恐怖緩和モード」があることだけ知ってて、もうなんか既に怖い。今のより更に怖い体験するってこと…?えぇ…?
私はこのゲームをパッケージの雰囲気だけで買って、前情報は一切シャットアウトしていたので、いざスタートして「一人称視点なの!!???」と声に出して驚いた。そんな状態でも没入に遜色なし、ロマンの詰まったゲーム。
以下ネタバレありまくり感想。
一人称視点すら知らずにプレイを始めたので、これが単純な探索アクションゲーじゃなく「ループもの」なのも勿論知らなかった。探索してたらいきなり閉館間際みたいな音楽が鳴り始めて、謎に焦ってたら視界が真っ白になるんだもの、訳が分からないにもほどがある。分からなすぎて怖かった。そしてスタート地点で目が覚めて、ようやくシステムを知る。
初めて経験することはなんでも怖い。
初めて太陽が爆発するのをちゃんと見た時は怖かったし、初めて量子の石を見た時も不気味というか怖かった。アンコウなんて以ての外である。さらに、ブラックホールから果てしない宇宙に放り出されたときは絶望したし、迷路の先に広大な地下都市を見つけた時も何か出てくるんじゃないかとびくびくした。巨人の大海では気象の荒さに、何かの拍子で即死するんじゃないかと思った。
恐怖は知的好奇心と表裏一体。知らない惑星に行くことはびくびくするが、この先に何があるのか知りたいから行くのだ。このゲームのホラゲーじみた演出(ささやかなBGM、不気味な物体、一人称視点)は、探索のドキドキを演出するのに最適だったなと思う。
そして回数を経るごとに、危険をうまく乗り切れたり、理屈が分かって恐怖しなくなったりする。
そしてすごいなと思ったのは、最後まで自分の装備のレベルアップを必要としないこと。大海のコアとか、量子の月とか、「まだ今の装備じゃたどり着けない」と思っていたところは実は自分をレベルアップする必要は全くなく、全て行き方の問題だった。ループものは常に初期装備ではじまる。得られた知識だけで戦っていく「プレイヤーとしてのレベルアップ感」が本当に楽しい。私はいまこの宇宙で冒険してるぜと思えた。
ゲームの大筋の内容は、自分の種族より前に存在していたらしい知的生命体の痕跡を探して、彼らに何があったのかを解析すること。その解析はやがて、なぜループしているのかの説明にも結びついてくる。
ただまぁ、結構説明が不親切だなとは感じた。どんな情報を得たかはゲーム内で記録されていくし要約してくれるけど、じゃあ次に何をしようかというのはプレイヤーが自分で考えなきゃいけない。探索したいだけならそれでもいいのだが、「エンディングに行くにはどうしたらいいんだ…」と思うこともあった。普通にネットの攻略に頼った。先人の知恵を借りるのがテーマのゲームだから(?)、この不親切さはむしろそれを推奨しているような気さえする。
というかアンコウ対策はマジで苦戦した。
攻略がなかったら詰んでた。先人の皆さんありがとうございます。
特にグッときた点としては、やっぱりエンディングの演出かな。最後のミッションからエンディングが流れるまでの流れが初めて見るパターンで新鮮だった。
このゲーム、辿り着くとこまで辿り着いたら、最後を見届けるかどうかはプレイヤーの選択で進んでいく。滅びを先伸ばして永遠にキャンプファイアしていてもいいし、仲間と話していてもいい。タイミングは私に委ねられている。そこに流れる雰囲気は意外と温かく、諦めがあり、そして悲観的ではない。「終わりを受け入れる」ためのエンディングだと感じた。
太陽はもう寿命を迎えて、滅ぶのはもう決まってる。そんなものは変えられない。だけどまぁ、それでいいんじゃない? 知りたいことは全て知ったし、好きなだけ冒険した。キャンプファイアを囲んで音楽を楽しめた。好きなだけマシュマロを焼いた。手は尽くした。終わってしまうのは悲しいけど、もう「やることはない」んだ。このゲームはこれから終わるんだ。もしかしたら終わりの後に新しい始まりがあるかも。だったら、さぁ次に進もう。
プレイヤーがそういう気持ちになるのを待って、最後の崩壊が訪れる。全ては終わる。スタッフロールが流れる。
永い永い時が流れたあと、新たな宇宙がまたはじまる。
このエンディングがね……めちゃくちゃ雰囲気よくて、『ゲームが終わる』たったそれだけなのに、大感動してしまった。胸に染みた。シナリオでもキャラへの感情移入でもなく、雰囲気でここまで泣かせにくる完成度、とんでもないね。
なんだこの心に残るゲームは。
そりゃCG酔いするし怖い箇所たくさんあるし操作性もシナリオも不親切で攻略をググらなかったら詰んでたけど、全て許せるくらい「ゲーム体験のクオリティ」が勝つ! プレイヤーの体験性をがっつり重視してるところが本当に良かった。いい経験になりました。
ちなみにDLCも購入済み。
DLCに何が含まれてるのは全く知らないが、「恐怖緩和モード」があることだけ知ってて、もうなんか既に怖い。今のより更に怖い体験するってこと…?えぇ…?
酉島伝法『金星の蟲』
『宿借りの星』で世界観の完成度の高さに惚れ、作家買いすることになった酉島伝法のSF短編集。酉島伝法といえば!な異形モノもありながら、様々なテーマの作品が味わえるという、贅沢な短編集だった。特に読んでて楽しかった作品の感想をまとめる。
「金星の蟲」
印刷工の男の日常が侵食されていく。全体的に湿度の高い不穏な空気が充満しており、めちゃくちゃ暗い。初手でこの陰鬱さは読者を挫折させに来てると思う。正直、読む気になれなくていきなり数ヶ月寝かした。巻末解説によれば、酉島作品の中でも造語が少ないとのことで、まぁたしかに読みやすかったけど、理解しやすいからこそ陰鬱さをストレートに感じるまである。この作者、SF小説じゃなくて陰鬱お仕事小説でも大成しただろうな。この暗さは別の短編集に収録されている「皆勤の徒」に似通っている。初手の収録作品の暗さで読者の心を折るところも似通っている。
「環刑錮」
脳は精神の牢獄!とかいう抽象的な話じゃなくて、自分の体を物理的に牢獄にしてしまうのはヤバいアイデアだと思います。(率直すぎる感想) 体の自由を奪われた結果、思考だけが生きているのであれば、それは本当に脳が牢獄になるよね…。動かせるものが思考だけになったとき、過去の記憶がとめどなくフラッシュバックするの分かるなぁ。主人公の行く末を見守るのが面白かった。
「ブロッコリー神殿」
未知の惑星に、惑星探査のチームがやってきて巻き込まれる。官能的だなぁと思って読んでたら本当にそういう趣旨で書かれたやつだった。語りが「侵入される側の惑星視点」なのが面白い。物語ってこんな角度で作れるんだ!という発見があった。語りも展開もシリアスなのに、作品タイトルがブロッコリー神殿とかいうセンスがずるい。作品の舞台がブロッコリーみたいな森(のようなもの)だからなんだろうけど、投げやりで率直すぎるタイトルに見えるのは私だけだろうか。他のタイトルがかっこいいだけに、作品名のインパクトが尾を引く。
「堕天の塔」
とある漫画作品のトリビュートとして書かれたものらしいよ。だから世界観の完全な把握はこの作品だけでは難しいなと思ったが、物語の筋がかなり好みだった。主人公がピンチの末に、かつてはぐれたものと再会するのアツい。酉島伝法、異形造形や造語による読書体験の没入感だけじゃなく、話の筋だけでも面白いからすき。『皆勤の徒』収録の「泥海の浮き城」でも思ったことだが、酉島伝法のハードボイルド風作品、ほんとすき。
「クリプトプラズム」
謎の物質を探査研究する話。本巻の中で特に宇宙ものっぽいというか、1番SFらしい作品だった。探査段階の予測不能感が面白いのは当然ながら、個人的には「読まれることによって完成する作品」である論理にめちゃくちゃ弱いので、こんなん反則だろ…と思いながら最終ページを閉じた。
やっぱり面白いね、SF!思考実験と娯楽性をガッチャンコした作品が多いところが好き。特に短編集は、数多の世界を覗き見てきた満足感がある。ここ2ヶ月ほど、新生活に追われて心の余裕がなかったけど、やっと読書する余裕が出てきたのも嬉しい。
酉島ワールドにまだ浸っていたいなと思ったので、外出したついでに本屋で『るん(笑)』を買ってきたが、よく考えたらヌフレツンもあったな…。また今度だなそれは。こうして「いつか読むつもり」の積み本が増えていくのであった。
『宿借りの星』で世界観の完成度の高さに惚れ、作家買いすることになった酉島伝法のSF短編集。酉島伝法といえば!な異形モノもありながら、様々なテーマの作品が味わえるという、贅沢な短編集だった。特に読んでて楽しかった作品の感想をまとめる。
「金星の蟲」
印刷工の男の日常が侵食されていく。全体的に湿度の高い不穏な空気が充満しており、めちゃくちゃ暗い。初手でこの陰鬱さは読者を挫折させに来てると思う。正直、読む気になれなくていきなり数ヶ月寝かした。巻末解説によれば、酉島作品の中でも造語が少ないとのことで、まぁたしかに読みやすかったけど、理解しやすいからこそ陰鬱さをストレートに感じるまである。この作者、SF小説じゃなくて陰鬱お仕事小説でも大成しただろうな。この暗さは別の短編集に収録されている「皆勤の徒」に似通っている。初手の収録作品の暗さで読者の心を折るところも似通っている。
「環刑錮」
脳は精神の牢獄!とかいう抽象的な話じゃなくて、自分の体を物理的に牢獄にしてしまうのはヤバいアイデアだと思います。(率直すぎる感想) 体の自由を奪われた結果、思考だけが生きているのであれば、それは本当に脳が牢獄になるよね…。動かせるものが思考だけになったとき、過去の記憶がとめどなくフラッシュバックするの分かるなぁ。主人公の行く末を見守るのが面白かった。
「ブロッコリー神殿」
未知の惑星に、惑星探査のチームがやってきて巻き込まれる。官能的だなぁと思って読んでたら本当にそういう趣旨で書かれたやつだった。語りが「侵入される側の惑星視点」なのが面白い。物語ってこんな角度で作れるんだ!という発見があった。語りも展開もシリアスなのに、作品タイトルがブロッコリー神殿とかいうセンスがずるい。作品の舞台がブロッコリーみたいな森(のようなもの)だからなんだろうけど、投げやりで率直すぎるタイトルに見えるのは私だけだろうか。他のタイトルがかっこいいだけに、作品名のインパクトが尾を引く。
「堕天の塔」
とある漫画作品のトリビュートとして書かれたものらしいよ。だから世界観の完全な把握はこの作品だけでは難しいなと思ったが、物語の筋がかなり好みだった。主人公がピンチの末に、かつてはぐれたものと再会するのアツい。酉島伝法、異形造形や造語による読書体験の没入感だけじゃなく、話の筋だけでも面白いからすき。『皆勤の徒』収録の「泥海の浮き城」でも思ったことだが、酉島伝法のハードボイルド風作品、ほんとすき。
「クリプトプラズム」
謎の物質を探査研究する話。本巻の中で特に宇宙ものっぽいというか、1番SFらしい作品だった。探査段階の予測不能感が面白いのは当然ながら、個人的には「読まれることによって完成する作品」である論理にめちゃくちゃ弱いので、こんなん反則だろ…と思いながら最終ページを閉じた。
やっぱり面白いね、SF!思考実験と娯楽性をガッチャンコした作品が多いところが好き。特に短編集は、数多の世界を覗き見てきた満足感がある。ここ2ヶ月ほど、新生活に追われて心の余裕がなかったけど、やっと読書する余裕が出てきたのも嬉しい。
酉島ワールドにまだ浸っていたいなと思ったので、外出したついでに本屋で『るん(笑)』を買ってきたが、よく考えたらヌフレツンもあったな…。また今度だなそれは。こうして「いつか読むつもり」の積み本が増えていくのであった。