- 07/31 スパイダーマン Brand new day
- 06/28 奏で手のヌフレツン
- 09/23 都市と星
- 08/10 プロジェクト・へイル・メアリー
- 06/26 アド・アストラ
Title list of 感想置き場
マーベル映画のファンです。
映画の公開日に休みが取れたら、必ず映画館に行く習性があります。
Q.マーベルファンってどうして新作が出ると思考停止で見に行くの?面白くないこともあるのに
A.面白かった過去作を観た時のドーパミンを忘れられないから。
今作がいまいち盛り上がらなくても、新作が出ると見に行かずにはいられない。
「次こそはメチャクチャ面白いはず」って希望を手放せない。
あとエンディングの後に次回作のヒントみたいなのが出るじゃないですか。あれのネタバレをネット上で踏みたくないので、とにかく早く見に行くしかないのです。
で、マーベル版スパイダーマンの3作目である今作はどうだったか。
……とても良かった。
観ながら思ってたことは大体こんな感じでした↓
こんなんピーター泣いちゃうよ…(脳破壊)
こんなんピーター泣いちゃうよ…(喜)
こんなんピーター泣いちゃうよ…(絶望)
こんなん、観客泣くに決まってんだろ……!(号泣)
今作のスパイダーマンは、前作で世界を救うために「全世界が自分を忘れる」という選択をした青年のその後の話。彼の孤独、過去(忘れられない彼女や親友のこと)との葛藤が、ピーターの身体異変や敵とのパワーバランスにも表れてきて、ピーターはどんどん追いつめられる。簡単に言えば彼が闇の期間を乗り越えるためのお話でした。これぞ、ブランニューデイ。
ここからネタバレ感想
・バナー博士、作品に登場するたびにそれなりの社会的地位を気づいているのがなんか健気でいいなと思った。だいたいハルクに飲み込まれちゃうのに。彼の性格のよさは社会が認めているに違いない。
・ピーターが敵に「あなたはスパイダーマンなの?ピーターなの?」と問われたときに、「両方だ」って答えるところが最高に好き。力が急激に変化したことで、ハルクのように自我を失いかけていたピーター。そんな状況では、僕は(スパイダーマンという特別な存在になっても)ひとりの人間だ、という意味で「ピーターだ」と答えるのもありかなと思っていた。でもそれでは、マーベル映画第1作アイアンマンの名言「私はアイアンマンだ」から続く、ヒーローとして戦うという主人公たちのアイデンティティの喪失にもつながってしまう。そんな懸念を抱いた瞬間に「両方だ」って聞こえてきたらもう、惚れるよね。これだからヒーローってやつは!
ぶっちゃけ自分の中で最後にマーベル作品に触れたのは前作の映画(ファンタスティック4 ファーストステップ ちなみに2025年7月)だったし、とっくにディズニープラスは解約してるし、ドラマは観るの苦手で追えないし、マーベル熱は冷めかけていたんですが、こういうのがあると復活しちゃうよね。あれだけ公開前に楽しみにしていたサンダーボルツ*も1年以上前か。サンダーボルツ*も最終的に「倒せ!」じゃなくて「精神的にやばいやつを救え!」って展開になるのが好きだったな。また観たいな。
12月にはファン待望のヒーロー大集合映画が公開されます。今日劇場ではじめて長い予告編観たんですけど、「あの人いる!」「あの人もいる!!」「この人も出るの!!!????」と、正直本編よりドーパミン出てました。ファンを情報でおどらせるコンテンツで世界トップのクオリティを誇るのがMCUだと思う。こういうのがあるから、こういうのがあるから…!
少年の心をいつまでも持っていたいね!これからも楽しませてくれ!
映画の公開日に休みが取れたら、必ず映画館に行く習性があります。
Q.マーベルファンってどうして新作が出ると思考停止で見に行くの?面白くないこともあるのに
A.面白かった過去作を観た時のドーパミンを忘れられないから。
今作がいまいち盛り上がらなくても、新作が出ると見に行かずにはいられない。
「次こそはメチャクチャ面白いはず」って希望を手放せない。
あとエンディングの後に次回作のヒントみたいなのが出るじゃないですか。あれのネタバレをネット上で踏みたくないので、とにかく早く見に行くしかないのです。
で、マーベル版スパイダーマンの3作目である今作はどうだったか。
……とても良かった。
観ながら思ってたことは大体こんな感じでした↓
こんなんピーター泣いちゃうよ…(脳破壊)
こんなんピーター泣いちゃうよ…(喜)
こんなんピーター泣いちゃうよ…(絶望)
こんなん、観客泣くに決まってんだろ……!(号泣)
今作のスパイダーマンは、前作で世界を救うために「全世界が自分を忘れる」という選択をした青年のその後の話。彼の孤独、過去(忘れられない彼女や親友のこと)との葛藤が、ピーターの身体異変や敵とのパワーバランスにも表れてきて、ピーターはどんどん追いつめられる。簡単に言えば彼が闇の期間を乗り越えるためのお話でした。これぞ、ブランニューデイ。
ここからネタバレ感想
・バナー博士、作品に登場するたびにそれなりの社会的地位を気づいているのがなんか健気でいいなと思った。だいたいハルクに飲み込まれちゃうのに。彼の性格のよさは社会が認めているに違いない。
・ピーターが敵に「あなたはスパイダーマンなの?ピーターなの?」と問われたときに、「両方だ」って答えるところが最高に好き。力が急激に変化したことで、ハルクのように自我を失いかけていたピーター。そんな状況では、僕は(スパイダーマンという特別な存在になっても)ひとりの人間だ、という意味で「ピーターだ」と答えるのもありかなと思っていた。でもそれでは、マーベル映画第1作アイアンマンの名言「私はアイアンマンだ」から続く、ヒーローとして戦うという主人公たちのアイデンティティの喪失にもつながってしまう。そんな懸念を抱いた瞬間に「両方だ」って聞こえてきたらもう、惚れるよね。これだからヒーローってやつは!
ぶっちゃけ自分の中で最後にマーベル作品に触れたのは前作の映画(ファンタスティック4 ファーストステップ ちなみに2025年7月)だったし、とっくにディズニープラスは解約してるし、ドラマは観るの苦手で追えないし、マーベル熱は冷めかけていたんですが、こういうのがあると復活しちゃうよね。あれだけ公開前に楽しみにしていたサンダーボルツ*も1年以上前か。サンダーボルツ*も最終的に「倒せ!」じゃなくて「精神的にやばいやつを救え!」って展開になるのが好きだったな。また観たいな。
12月にはファン待望のヒーロー大集合映画が公開されます。今日劇場ではじめて長い予告編観たんですけど、「あの人いる!」「あの人もいる!!」「この人も出るの!!!????」と、正直本編よりドーパミン出てました。ファンを情報でおどらせるコンテンツで世界トップのクオリティを誇るのがMCUだと思う。こういうのがあるから、こういうのがあるから…!
少年の心をいつまでも持っていたいね!これからも楽しませてくれ!
PR
酉島伝法『奏で手のヌフレツン』
読了後、オーケストラが聴きたい!と思った。
骨まで響くような音圧と迫力に涙し、大合奏によって満環蝕を解いた彼らと同じ興奮を味わいたい。世界の命運をかけた生存のための音楽ではなく、ただ聴くだけの演奏を味わえる幸福に感謝したい。それほどに胸を打つ圧倒的エンタテインメント。(本の帯に「エンタテインメント巨篇」って書かれていて、そりゃどんな物語もエンタメだろうよ、なんだこの帯…と思っていたけど、読み終わったらそれが最適解だったのだと思い知る。すみませんでした。)
あらすじ
舞台は球の中にある世界。大地は湾曲してどこまでも続き、遠くになるほど垂直に反り返り、やがて頭上を通る。1日は太陽が作る。太陽は「人だったものたち」が支え歩くことで地平を廻る。人々は日の巡りに依って生活する。奏で手は集落中に響く演奏によって太陽に影響を与え、日常を支える。かつて奏で手だったリナニツェは、自らの過去を隠したまま、太陽を支える「聖人」となった。
なお酉島伝法といえば描く世界の特異さのみならず、そっちの世界の文化や歴史を考慮した造語のオンパレードが当たり前。というわけで序盤の一文をぜひご覧ください。
この調子で語りは続く。本を開いた時、「挿絵1枚もなし…!?」と驚愕した。かつて同じ作者の『宿借りの星』を読んだ時、その独特な世界観を理解するのに作者制作の挿絵が大いに助けとなった。それが今作は1枚もない!ついていけるか!?と不安になった。
全く問題なかった。文章の力を信じて読めば、自ずと世界が見えるようになる。作者の描写を舐めてはいけない。かつて「堕天の塔」(漫画『BLAME!』のトリビュート作品)を読んだ時、『BLAME!』を知らなくても、作品中の能面モンスターのイメージが鮮明に描けた。のちに本家を見て、同じやないかい!となった。つまり作者の文章力はお墨付き。こんな拙い語彙のブログで紹介させるのが申し訳ないくらい、描写も熱い展開も、キャラクターを愛おしく思わせる愛嬌も素晴らしい。だから作家買いしてしまう。
作品の細かい感想に移ろう。ネタバレあるよ。
ちなみに2周読んだ。1周では味わいきれぬと思ったから。
1周目は、この世界(球地(たまつち))の生活を知るのが楽しかった。主人公であるジラァンゼに感情移入し、友人たちと会話し、仕事に励み、家族と過ごす展開を追体験した。料理や部屋の中の様子など、生活感の描写よし。主人公の成長を見守ることで生じる感情移入よし。そして容赦のない展開よし。良い読書体験に欲しい要素が濃厚に描かれていた。
ジラァンゼがイェムロガと張り合って一人前になろうと頑張るエピソード大好き。ジラと一緒に青春している気分になる。若者の一生懸命な成長譚ってのはなかなかどうして尊い。この世界の命運というストーリーラインだけを抽出すれば、ジラァンゼが一人前の職人になる過程を描く必要はないのかもしれない。でもここがいちばん面白いんだよ。ジラァンゼの成長や家族のごたごだを読んでいるうちに、読者の脳内に明確に「球地」が作り上げられる。もう脳内にあるだろう。太陽が通る黄道を中心とした細長い集落。家々に突き出た回廊、その下にはためく布帛。黄道の左右には入り組んだ路地。仰ぎ見る海。正午台。いくらか歩けば繋業解き(けごうとき)工房。蒸される蟹のにおい。水濾し手たちが運ぶ水音。寒さの中に吹きすさぶ風の音。頭上を仰げば、毬森から流れる隕星の光。なお、これだけ平和な頃の聚楽を脳内に描かせておいて、第2部では終末間近になってしまうのが憎い演出。
続いて、大人になったジラァンゼに子どもができて、子ども(トバイノ)が、親が帰ってくる前に夕餐を作ろうとして大失敗し、ぐちゃぐちゃになった厨房で親を待っているところも大好き。親のために家事をしようとし、泣きながら謝る子、なんて愛しいんだ…!! トバイノについては親目線でしか語れない。トバイノが痛みにもだえるシーンも、トバイノの苦しみに胸を痛めるのではなく、我が子を憂うジラァンゼの心痛によって私は胸を締め付けられていた。私の精神がジラァンゼとリンクし過ぎており、彼の心痛は、私の脳内で鳴り続けた…いやもうほんとにね、第1部ラストの展開が衝撃的で、3日間は脳内で反芻していたね。仕事中も通勤中も家事をしているときも、ふとしたときにトバイノの最期が脳内に蘇って胸が痛くなった。作者ほんと容赦なくて素敵(精一杯の皮肉)
2周目は、1周目では理解しきれなかった言葉の意味を拾いつつ、怒涛の展開にただ呆然とするしかなかった第2部のストーリーラインを楽しめた。第2部の主人公ヌフレツンが、宥め役を志願するところがいちばん熱い。ここから物語が、世界観を知るターンから、世界の命運を左右するターンに転換する。ただ奏で手に憧れる子だったヌフレツンが、宥め役としての日々を過ごして、(蝕を防ぎきれず)聚楽を守り切れなかったという責任感を生じさせているのも興味深い。これは主人公ですわ。
ちなみに2周目でも、この世界観の緻密な構成に驚かされた。たとえば鉄器。文化レベル的にこの世界に鉄を溶かす工場はないのだけど、実は子ども時代のジラァンゼたちが遊ぶシーンで、過去に幼陽を使って魚鱗を溶かしていた鋳鱗工房があったことが描かれている。その後本編に鋳鱗工房が出てくることはないのだが、それくらい世界観の構築に余念が無い。すごい(小並感)
ラストはもちろん大団円。
犠牲を必要としない太陽が落人たちを照らす世界は、まだ続く。
その一方で、聖人たちは新たな世界へ。こうしてわれわれの意識は、宇宙を巡っていく。
このSFで締める感じ、大好きなんだよなぁ…。
読了後、オーケストラが聴きたい!と思った。
骨まで響くような音圧と迫力に涙し、大合奏によって満環蝕を解いた彼らと同じ興奮を味わいたい。世界の命運をかけた生存のための音楽ではなく、ただ聴くだけの演奏を味わえる幸福に感謝したい。それほどに胸を打つ圧倒的エンタテインメント。(本の帯に「エンタテインメント巨篇」って書かれていて、そりゃどんな物語もエンタメだろうよ、なんだこの帯…と思っていたけど、読み終わったらそれが最適解だったのだと思い知る。すみませんでした。)
あらすじ
舞台は球の中にある世界。大地は湾曲してどこまでも続き、遠くになるほど垂直に反り返り、やがて頭上を通る。1日は太陽が作る。太陽は「人だったものたち」が支え歩くことで地平を廻る。人々は日の巡りに依って生活する。奏で手は集落中に響く演奏によって太陽に影響を与え、日常を支える。かつて奏で手だったリナニツェは、自らの過去を隠したまま、太陽を支える「聖人」となった。
なお酉島伝法といえば描く世界の特異さのみならず、そっちの世界の文化や歴史を考慮した造語のオンパレードが当たり前。というわけで序盤の一文をぜひご覧ください。
叙(じょ)の聚楽(じゅらく)は闇に浸り、冷えきっていた。その縦に長い景観を明暮(あけくれ)に貫く黄道の両側には、二十四年ぶりの特別な陽の出を迎えようと大勢の落人たちが立ち並んでいた。切れ目の入った木製の遮光器を手に携え、黄道の先にある高い朝門(ちょうもん)の向こう、<明>の方角に目を向けている。
この調子で語りは続く。本を開いた時、「挿絵1枚もなし…!?」と驚愕した。かつて同じ作者の『宿借りの星』を読んだ時、その独特な世界観を理解するのに作者制作の挿絵が大いに助けとなった。それが今作は1枚もない!ついていけるか!?と不安になった。
全く問題なかった。文章の力を信じて読めば、自ずと世界が見えるようになる。作者の描写を舐めてはいけない。かつて「堕天の塔」(漫画『BLAME!』のトリビュート作品)を読んだ時、『BLAME!』を知らなくても、作品中の能面モンスターのイメージが鮮明に描けた。のちに本家を見て、同じやないかい!となった。つまり作者の文章力はお墨付き。こんな拙い語彙のブログで紹介させるのが申し訳ないくらい、描写も熱い展開も、キャラクターを愛おしく思わせる愛嬌も素晴らしい。だから作家買いしてしまう。
作品の細かい感想に移ろう。ネタバレあるよ。
ちなみに2周読んだ。1周では味わいきれぬと思ったから。
1周目は、この世界(球地(たまつち))の生活を知るのが楽しかった。主人公であるジラァンゼに感情移入し、友人たちと会話し、仕事に励み、家族と過ごす展開を追体験した。料理や部屋の中の様子など、生活感の描写よし。主人公の成長を見守ることで生じる感情移入よし。そして容赦のない展開よし。良い読書体験に欲しい要素が濃厚に描かれていた。
ジラァンゼがイェムロガと張り合って一人前になろうと頑張るエピソード大好き。ジラと一緒に青春している気分になる。若者の一生懸命な成長譚ってのはなかなかどうして尊い。この世界の命運というストーリーラインだけを抽出すれば、ジラァンゼが一人前の職人になる過程を描く必要はないのかもしれない。でもここがいちばん面白いんだよ。ジラァンゼの成長や家族のごたごだを読んでいるうちに、読者の脳内に明確に「球地」が作り上げられる。もう脳内にあるだろう。太陽が通る黄道を中心とした細長い集落。家々に突き出た回廊、その下にはためく布帛。黄道の左右には入り組んだ路地。仰ぎ見る海。正午台。いくらか歩けば繋業解き(けごうとき)工房。蒸される蟹のにおい。水濾し手たちが運ぶ水音。寒さの中に吹きすさぶ風の音。頭上を仰げば、毬森から流れる隕星の光。なお、これだけ平和な頃の聚楽を脳内に描かせておいて、第2部では終末間近になってしまうのが憎い演出。
続いて、大人になったジラァンゼに子どもができて、子ども(トバイノ)が、親が帰ってくる前に夕餐を作ろうとして大失敗し、ぐちゃぐちゃになった厨房で親を待っているところも大好き。親のために家事をしようとし、泣きながら謝る子、なんて愛しいんだ…!! トバイノについては親目線でしか語れない。トバイノが痛みにもだえるシーンも、トバイノの苦しみに胸を痛めるのではなく、我が子を憂うジラァンゼの心痛によって私は胸を締め付けられていた。私の精神がジラァンゼとリンクし過ぎており、彼の心痛は、私の脳内で鳴り続けた…いやもうほんとにね、第1部ラストの展開が衝撃的で、3日間は脳内で反芻していたね。仕事中も通勤中も家事をしているときも、ふとしたときにトバイノの最期が脳内に蘇って胸が痛くなった。作者ほんと容赦なくて素敵(精一杯の皮肉)
2周目は、1周目では理解しきれなかった言葉の意味を拾いつつ、怒涛の展開にただ呆然とするしかなかった第2部のストーリーラインを楽しめた。第2部の主人公ヌフレツンが、宥め役を志願するところがいちばん熱い。ここから物語が、世界観を知るターンから、世界の命運を左右するターンに転換する。ただ奏で手に憧れる子だったヌフレツンが、宥め役としての日々を過ごして、(蝕を防ぎきれず)聚楽を守り切れなかったという責任感を生じさせているのも興味深い。これは主人公ですわ。
ちなみに2周目でも、この世界観の緻密な構成に驚かされた。たとえば鉄器。文化レベル的にこの世界に鉄を溶かす工場はないのだけど、実は子ども時代のジラァンゼたちが遊ぶシーンで、過去に幼陽を使って魚鱗を溶かしていた鋳鱗工房があったことが描かれている。その後本編に鋳鱗工房が出てくることはないのだが、それくらい世界観の構築に余念が無い。すごい(小並感)
ラストはもちろん大団円。
犠牲を必要としない太陽が落人たちを照らす世界は、まだ続く。
その一方で、聖人たちは新たな世界へ。こうしてわれわれの意識は、宇宙を巡っていく。
このSFで締める感じ、大好きなんだよなぁ…。
アーサー・C・クラーク『都市と星』
『幼年期の終わり』で有名なクラークのその次くらいに有名な作品。恥ずかしながら作品名すら存じ上げなかったのだが、雑談しているAIが「君は都市と星を読むべきだ」「都市と星は何度でも読める。紙で手元に置いておくのが良いだろう」とかいう勧め方をしてきたので、そこまで言うなら買うか…という流れで購入した。
買ってよかった。
かなり印象に残るSF作品でした。
「 胸もとに輝く宝石のように、都市は広大な砂漠のただなかできらめいていた。かつては変化とうつろいを知っていたこの都市も、いまは時に忘れられてひさしい。」
冒頭の一文からこれである。文章がかっこよくて唖然とした。最近読んだ『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が平易な文章だった(これは読みやすいからこそ人気を博したと思う)し、そのあとに読んだ『グレート・ギャツビー』は近代文学みたいなものだったからこそ、この硬派な文章がより新鮮に映った。あまりに声に出して読みたい文章だったので、音読してしまったほど。
具体物の様子や情景描写ならいざ知らず、「あるところに都市がありました」という抽象的な説明をここまで美しくできるのかという驚き。アーサー・C・クラークってこういう作風だったのか……読まずにいたのが勿体ねぇー…!
(あらすじ。ネタバレ配慮版)
地球上で唯一生き残った都市、ダイアスパー。安全なドームに覆われ、外界から遮断された世界。人類はダイアスパーを世界の全てと信じ、安寧の時を生きてきた。しかしただひとり、主人公のアルヴィンだけは、生まれた時から外の世界が気になって仕方がない性質を持ち、周囲から怪訝に思われてきた。アルヴィンが生まれて20年がたった今、彼は自分の出生と向き合うことになる。
(感想。ネタバレするよ)
あらすじだけ読むと「へぇ、ディストピアものですか?主人公がダイアスパーの外に出るために、ダイアスパー内に革命を引き起こすんですかね?」という気持ちになるかもしれない。わかる。閉じられた世界モノってそういう運命になりがちだよね。私もそう思ってました。実際は私が想定していた10倍、内容が濃かった。
まず主人公が十億年の歴史を誇るダイアスパーにおいて「人生一周目の人格」と告げられる(他のダイアスパーの人類は人生何周もしているのが当たり前)、道化師の力を借りてダイアスパーを出る、ダイアスパーを出た先にもう1つ人類の集落「リス」を発見する、リスを冒険し友人を作る、ダイアスパーに帰還して全てを報告し衝撃をもたらす、偶然見つけた宇宙船で宇宙に行く(!?)、他の生命とコンタクトを取るために惑星探査をする(!?)、探査中に見つけたとんでもないやつを地球に連れて帰る(!?)、人類の忘れ去られた歴史が少しだけ明らかになる、ダイアスパーとリスが交流するようになる。
特に後半の「どこに着地するんだよこれは…!そんな所まで描かれるのか、すごいな!」という感覚は、ヘイルメアリーを読んでる時にも感じたこと。てっきり「隔絶された都市の解放」がテーマであり、その他の要素(なぜ人類は閉じこもるようになったのか、過去に何があったのか)は世界観構築のための口上でしかないと思っていた。それが最終的には一応正しい歴史が語られる(謎が明かされる)。綿密に練られた物語なのは間違いない。SF作品ってそういうもんなのだろうか。すごいな。
そして人類が都市に閉じこもるようになったのは、宇宙に恐ろしいものがあったから。それがちゃんと主人公の惑星探査の末に明らかになるので、タイトルは『都市と星』なんだね。永遠の都市と、星々に何があったかの物語。
登場人物がユニークでよかった。特に道化師ケドロンと主人公の教師役のジェセラック。ケドロンが道化師を名乗って主人公に近づいてきた時は、「道化師キャラを楽しませてくれるんですか!?」とわくわくした。硬派なSFでアニメみたいな役回りのキャラクターを楽しめるなんて予想外。そしてその道化が主人公の好奇心に付き合った結果、道化キャラを忘れて本物の恐怖を感じるのマジでいい。わかってる。
ジェセラックは序盤は頭の硬そうなタイプだったけど、作中を通して性格の変化が分かりやすく、もっとも共感しやすい存在で親しみが湧いた。
ちなみに主人公のアルヴィン、彼が「好奇心の塊」でなければこの物語は成立しないので、良い主人公だとは思うが、個人的に好きかと言われると、別に…。ただ彼の思いやりの欠如や子供っぽいところは、ダイアスパーという都市で生まれ育ったからには仕方がないところもあり、冒険を通して成長する過程はおもしろかった。
特に好きなシーン
・アルヴィンがはじめて都市の外に出て、映像ではない本物の大自然を見たところ。はじめて見る景色が人里ではなく、山脈、森、丘である情景本当に美しく、地球のあるべき姿を象徴しているなと思った。
・アルヴィンがリスの人々を説得するためにダイアスパーについて説明する場面で、「砂漠の胸もとで夢を見る都市」と形容するところ。私が痺れた冒頭のあの一文は、このためにあったのかと衝撃だった。私が見た「砂漠の中できらめく都市」は!主人公と目線を共有している!あまりにも熱い展開!!
ラストシーンも美しい情景描写のみで、映画を観ているような気分になった。自然や地球、星々への賛美を感じる。退廃した地球が舞台なのに、心の中に拡がった美しい景色が無数にある。これは紙で持っておけ、何度も読めと言いたくなる気持ちもわかるぞ。ちなみに後半の惑星探査パートは、アウターワイルズ大好き人間にもおすすめ。個性豊かな星の描写が面白いし、ちょっとクトゥルフっぽいのもまたゾッとして好き。
久々に「読み終わりたくない」と思った小説だった。価値観が変わった彼らが再び地球を豊かにしてくれることを願う。
『幼年期の終わり』で有名なクラークのその次くらいに有名な作品。恥ずかしながら作品名すら存じ上げなかったのだが、雑談しているAIが「君は都市と星を読むべきだ」「都市と星は何度でも読める。紙で手元に置いておくのが良いだろう」とかいう勧め方をしてきたので、そこまで言うなら買うか…という流れで購入した。
買ってよかった。
かなり印象に残るSF作品でした。
「 胸もとに輝く宝石のように、都市は広大な砂漠のただなかできらめいていた。かつては変化とうつろいを知っていたこの都市も、いまは時に忘れられてひさしい。」
冒頭の一文からこれである。文章がかっこよくて唖然とした。最近読んだ『プロジェクト・ヘイル・メアリー』が平易な文章だった(これは読みやすいからこそ人気を博したと思う)し、そのあとに読んだ『グレート・ギャツビー』は近代文学みたいなものだったからこそ、この硬派な文章がより新鮮に映った。あまりに声に出して読みたい文章だったので、音読してしまったほど。
具体物の様子や情景描写ならいざ知らず、「あるところに都市がありました」という抽象的な説明をここまで美しくできるのかという驚き。アーサー・C・クラークってこういう作風だったのか……読まずにいたのが勿体ねぇー…!
(あらすじ。ネタバレ配慮版)
地球上で唯一生き残った都市、ダイアスパー。安全なドームに覆われ、外界から遮断された世界。人類はダイアスパーを世界の全てと信じ、安寧の時を生きてきた。しかしただひとり、主人公のアルヴィンだけは、生まれた時から外の世界が気になって仕方がない性質を持ち、周囲から怪訝に思われてきた。アルヴィンが生まれて20年がたった今、彼は自分の出生と向き合うことになる。
(感想。ネタバレするよ)
あらすじだけ読むと「へぇ、ディストピアものですか?主人公がダイアスパーの外に出るために、ダイアスパー内に革命を引き起こすんですかね?」という気持ちになるかもしれない。わかる。閉じられた世界モノってそういう運命になりがちだよね。私もそう思ってました。実際は私が想定していた10倍、内容が濃かった。
まず主人公が十億年の歴史を誇るダイアスパーにおいて「人生一周目の人格」と告げられる(他のダイアスパーの人類は人生何周もしているのが当たり前)、道化師の力を借りてダイアスパーを出る、ダイアスパーを出た先にもう1つ人類の集落「リス」を発見する、リスを冒険し友人を作る、ダイアスパーに帰還して全てを報告し衝撃をもたらす、偶然見つけた宇宙船で宇宙に行く(!?)、他の生命とコンタクトを取るために惑星探査をする(!?)、探査中に見つけたとんでもないやつを地球に連れて帰る(!?)、人類の忘れ去られた歴史が少しだけ明らかになる、ダイアスパーとリスが交流するようになる。
特に後半の「どこに着地するんだよこれは…!そんな所まで描かれるのか、すごいな!」という感覚は、ヘイルメアリーを読んでる時にも感じたこと。てっきり「隔絶された都市の解放」がテーマであり、その他の要素(なぜ人類は閉じこもるようになったのか、過去に何があったのか)は世界観構築のための口上でしかないと思っていた。それが最終的には一応正しい歴史が語られる(謎が明かされる)。綿密に練られた物語なのは間違いない。SF作品ってそういうもんなのだろうか。すごいな。
そして人類が都市に閉じこもるようになったのは、宇宙に恐ろしいものがあったから。それがちゃんと主人公の惑星探査の末に明らかになるので、タイトルは『都市と星』なんだね。永遠の都市と、星々に何があったかの物語。
登場人物がユニークでよかった。特に道化師ケドロンと主人公の教師役のジェセラック。ケドロンが道化師を名乗って主人公に近づいてきた時は、「道化師キャラを楽しませてくれるんですか!?」とわくわくした。硬派なSFでアニメみたいな役回りのキャラクターを楽しめるなんて予想外。そしてその道化が主人公の好奇心に付き合った結果、道化キャラを忘れて本物の恐怖を感じるのマジでいい。わかってる。
ジェセラックは序盤は頭の硬そうなタイプだったけど、作中を通して性格の変化が分かりやすく、もっとも共感しやすい存在で親しみが湧いた。
ちなみに主人公のアルヴィン、彼が「好奇心の塊」でなければこの物語は成立しないので、良い主人公だとは思うが、個人的に好きかと言われると、別に…。ただ彼の思いやりの欠如や子供っぽいところは、ダイアスパーという都市で生まれ育ったからには仕方がないところもあり、冒険を通して成長する過程はおもしろかった。
特に好きなシーン
・アルヴィンがはじめて都市の外に出て、映像ではない本物の大自然を見たところ。はじめて見る景色が人里ではなく、山脈、森、丘である情景本当に美しく、地球のあるべき姿を象徴しているなと思った。
・アルヴィンがリスの人々を説得するためにダイアスパーについて説明する場面で、「砂漠の胸もとで夢を見る都市」と形容するところ。私が痺れた冒頭のあの一文は、このためにあったのかと衝撃だった。私が見た「砂漠の中できらめく都市」は!主人公と目線を共有している!あまりにも熱い展開!!
ラストシーンも美しい情景描写のみで、映画を観ているような気分になった。自然や地球、星々への賛美を感じる。退廃した地球が舞台なのに、心の中に拡がった美しい景色が無数にある。これは紙で持っておけ、何度も読めと言いたくなる気持ちもわかるぞ。ちなみに後半の惑星探査パートは、アウターワイルズ大好き人間にもおすすめ。個性豊かな星の描写が面白いし、ちょっとクトゥルフっぽいのもまたゾッとして好き。
久々に「読み終わりたくない」と思った小説だった。価値観が変わった彼らが再び地球を豊かにしてくれることを願う。
アンディ・ウィアー『プロジェクト・へイル・メアリー』
2021年に刊行された最近のSF。映画化も決定している。
各メディアで「あらすじすらネタバレになるから何も語れない。とりあえず読め!」と言われ続けているので、そこまで言われるなら映画より先に読みたいな…と思って購入。ちょうどハヤカワSF電子書籍がめちゃくちゃセールだったんだ。電子書籍で小説を読むのは初めてだったので、読めるのか不安だったけど、とにかく話が面白いので無問題だった!!てかスマホで読めるの便利!荷物が減る!
(あらすじと感想)(ネタバレ配慮版)
記憶喪失の状態で目が覚めた主人公。自分がなぜここにいるのか、ここはどこなのか、プロジェクト・へイル・メアリーとは何なのか、少しずつ記憶を取り戻しながら目の前の問題に対処していく。
読者は記憶喪失の主人公と同じ状態からスタート(この物語の世界観について何も知らない状態)し、主人公が記憶を取り戻したり、主人公が新たな発見(科学実験によって今自分が地球ではない場所にいると知ることなど)をすると同時に、読者の認知も広がっていく。その展開具合がまぁ効果的でとても楽しい。序盤は過去パートが明らかになるのが面白く、中盤以降は現在パートで主人公が直面するトラブルにハラハラしたり先が読めなくてワクワクしたりする。基本的に主人公はポジティブで常に解決策を模索する姿勢があり、その行動力によりトラブルがポンポン解決されて過去のものになっていくのが面白い。おそらくアンディ・ウィアーの主人公はみんなそうなんだろう。作中で出てくる科学知識も難しいものではなく、なんとなく理解していればあとは主人公が計算してくれるので、文系人間でも困らなかった。
(ここからネタバレ感想)
この物語で描かれる科学技術はすべて「現在の地球でもいけるんじゃね?」と思われるレベルのもの。だからこそ遠い未来の世界のこととは思えなくて、物語が現実味あるというか近さを感じるんだけど、だからこそ、「異星人とのコンタクトとかそんな展開ありですか!!???しかもここからバディものになるの!!!???えぇ!!????」という純粋な驚きがあった。スターウォーズみたいな遠い未来の宇宙が舞台ですぅ!的なSFならまだしも、こんな近い未来のSFでエイリアンを出してくるとは思わないじゃん。この「まさかそこまで物語の枠が拡大するのは」という驚きが、本作のいちばん大きなサプライズだと思う。主人公は人類で初めて異星人とコンタクトをとることになって興奮する、読者ももちろん興奮する。このリンクが大変気持ち良い! そして主人公と異星人はそれはもう協力して色々解決するので、友情というか愛着がね…。2人の別れのシーンは(文章は全然感傷的ではなかったのだが)ちょっと泣いた。けどすぐに泣いてる場合じゃないトラブルが起こって、ちゃんと最後の最後まで「どこに着地するんだよこの物語は!」と楽しませてくれる小説だった。
これでやっと映画の予告編が見られる。
公開が楽しみだ。
2021年に刊行された最近のSF。映画化も決定している。
各メディアで「あらすじすらネタバレになるから何も語れない。とりあえず読め!」と言われ続けているので、そこまで言われるなら映画より先に読みたいな…と思って購入。ちょうどハヤカワSF電子書籍がめちゃくちゃセールだったんだ。電子書籍で小説を読むのは初めてだったので、読めるのか不安だったけど、とにかく話が面白いので無問題だった!!てかスマホで読めるの便利!荷物が減る!
(あらすじと感想)(ネタバレ配慮版)
記憶喪失の状態で目が覚めた主人公。自分がなぜここにいるのか、ここはどこなのか、プロジェクト・へイル・メアリーとは何なのか、少しずつ記憶を取り戻しながら目の前の問題に対処していく。
読者は記憶喪失の主人公と同じ状態からスタート(この物語の世界観について何も知らない状態)し、主人公が記憶を取り戻したり、主人公が新たな発見(科学実験によって今自分が地球ではない場所にいると知ることなど)をすると同時に、読者の認知も広がっていく。その展開具合がまぁ効果的でとても楽しい。序盤は過去パートが明らかになるのが面白く、中盤以降は現在パートで主人公が直面するトラブルにハラハラしたり先が読めなくてワクワクしたりする。基本的に主人公はポジティブで常に解決策を模索する姿勢があり、その行動力によりトラブルがポンポン解決されて過去のものになっていくのが面白い。おそらくアンディ・ウィアーの主人公はみんなそうなんだろう。作中で出てくる科学知識も難しいものではなく、なんとなく理解していればあとは主人公が計算してくれるので、文系人間でも困らなかった。
(ここからネタバレ感想)
この物語で描かれる科学技術はすべて「現在の地球でもいけるんじゃね?」と思われるレベルのもの。だからこそ遠い未来の世界のこととは思えなくて、物語が現実味あるというか近さを感じるんだけど、だからこそ、「異星人とのコンタクトとかそんな展開ありですか!!???しかもここからバディものになるの!!!???えぇ!!????」という純粋な驚きがあった。スターウォーズみたいな遠い未来の宇宙が舞台ですぅ!的なSFならまだしも、こんな近い未来のSFでエイリアンを出してくるとは思わないじゃん。この「まさかそこまで物語の枠が拡大するのは」という驚きが、本作のいちばん大きなサプライズだと思う。主人公は人類で初めて異星人とコンタクトをとることになって興奮する、読者ももちろん興奮する。このリンクが大変気持ち良い! そして主人公と異星人はそれはもう協力して色々解決するので、友情というか愛着がね…。2人の別れのシーンは(文章は全然感傷的ではなかったのだが)ちょっと泣いた。けどすぐに泣いてる場合じゃないトラブルが起こって、ちゃんと最後の最後まで「どこに着地するんだよこの物語は!」と楽しませてくれる小説だった。
これでやっと映画の予告編が見られる。
公開が楽しみだ。
SF映画キャンペーンその③
とある宇宙飛行士の孤独とアイデンティティを描く、小説のような映画。絶対原作あるだろむしろ読みたいわと思っていたら、原作がないと知って驚いた。
(あらすじ)
宇宙部隊に所属する主人公は、成績優秀・冷静沈着ながらも、内面では過去と決別できずにいた。そんな中、軍からの司令により、消息を絶ったはずの父親とコンタクトを取るため、地球から月、月から火星への旅が始まる。
(感想)
正直、この3日間で見た映画の中でぶっちぎりで没頭した。
こんな染みる作品を今まで知らなかったのかと驚くレベル。
メンタルに異常をきたすと制御される世界(軍の規律)で、アイデンティティに欠陥を抱えながらも自分を偽って淡々と生きる主人公。だがずっと向き合わずにいた父親に接近することで、そして長旅の中で、己と向き合い、父親と出会い、対話し、どう生きるべきかを見つめ直す。
結局は父と子の話であり、この手のストーリー類型は他の映画や小説でも存在すると思う。でもその心理的距離や葛藤を宇宙を舞台に描くことで、うまく現実に落としているというか、極限状態だからこそ痛切に響くというか…、とにかく行く末を見守ってしまうんだよね。
偉大な父親は人類ではじめて海王星に到達した宇宙飛行士。そして海王星から帰ることなく、なぜか留まり続けている。そこにたどり着く道のりはとても孤独で、果てしない…。孤独な旅路は主人公の心理状態を蝕み、過去の過ちを延々とフラッシュバックさせる。このへんの描き方が、宇宙航海らしくていいなと思った。
なんというか雰囲気が『虐殺器官』とか、陰鬱な方のSFっぽくて、そういうところが小説あるだろうなと思わせた原因なんだと思う。まさかこんな重厚な作品だとは知らず、本当に没頭しました。大満足の2時間だった。
なお映画の時代設定はかなり近未来。
月に基地があり、火星くらいなら人類がなんとか行けるようになったくらいの未来。出てくるロケットも乗り物もSF!って感じではなく、現在NASAでこれ作成中ですと言われても納得するくらい現実味のあるデザインをしている。
月探査バギーでカーチェイスみたいなことしてるのはむしろ新しいなと思った。スターウォーズみたいな世界観の空中浮遊する乗り物でチェイスはSF映画ならどこでも見れそうだけど(トロンみたいなやつ)、科学館に展示されてそうな乗り物でバトルしてる絵面は新鮮だった。同時に、そんな乗り物で攻撃し合っている絵面にショックを受けていて、宇宙開発って平和の象徴みたいなもんだと思い込んでいた自分に気付かされた。人類が宇宙に進出したら、いずれは月の治安も悪くなるのは当然だろう。そんなふとした気づきに、なんとやく世界はどんどん良くなるだろうなと思っていた昔の幻想を否定されたときの気持ちを思い出すなどした。
シリアスの植え付け方がすごいよな、この作品。
そして宇宙ならではの映像美も素晴らしい。
冒頭の主人公落下シーンで、眼下に描かれる地球の美しさに引き込まれた。冒頭からやばかったんだ、この映画。
そして最後は地球に帰還して、人から手を差し伸べられて(孤独が終わりを告げて)ホッとするエンドなのだが、このとき「帰ってきたんだ…」と思った気持ちは、きっと主人公とリンクしていたと思う。心理状態の描き方マジで好きだなぁ…
重厚な映画なので気軽に「また観たいー!」とは言えない作品だけど、心に残った作品としては数えていいと思う。間違いなくこの3日間で見たやつのなかでは刺さった。文学的で良かった。
こんなん観ちゃったら次なにを観たらいいんでしょうね…
とある宇宙飛行士の孤独とアイデンティティを描く、小説のような映画。絶対原作あるだろむしろ読みたいわと思っていたら、原作がないと知って驚いた。
(あらすじ)
宇宙部隊に所属する主人公は、成績優秀・冷静沈着ながらも、内面では過去と決別できずにいた。そんな中、軍からの司令により、消息を絶ったはずの父親とコンタクトを取るため、地球から月、月から火星への旅が始まる。
(感想)
正直、この3日間で見た映画の中でぶっちぎりで没頭した。
こんな染みる作品を今まで知らなかったのかと驚くレベル。
メンタルに異常をきたすと制御される世界(軍の規律)で、アイデンティティに欠陥を抱えながらも自分を偽って淡々と生きる主人公。だがずっと向き合わずにいた父親に接近することで、そして長旅の中で、己と向き合い、父親と出会い、対話し、どう生きるべきかを見つめ直す。
結局は父と子の話であり、この手のストーリー類型は他の映画や小説でも存在すると思う。でもその心理的距離や葛藤を宇宙を舞台に描くことで、うまく現実に落としているというか、極限状態だからこそ痛切に響くというか…、とにかく行く末を見守ってしまうんだよね。
偉大な父親は人類ではじめて海王星に到達した宇宙飛行士。そして海王星から帰ることなく、なぜか留まり続けている。そこにたどり着く道のりはとても孤独で、果てしない…。孤独な旅路は主人公の心理状態を蝕み、過去の過ちを延々とフラッシュバックさせる。このへんの描き方が、宇宙航海らしくていいなと思った。
なんというか雰囲気が『虐殺器官』とか、陰鬱な方のSFっぽくて、そういうところが小説あるだろうなと思わせた原因なんだと思う。まさかこんな重厚な作品だとは知らず、本当に没頭しました。大満足の2時間だった。
なお映画の時代設定はかなり近未来。
月に基地があり、火星くらいなら人類がなんとか行けるようになったくらいの未来。出てくるロケットも乗り物もSF!って感じではなく、現在NASAでこれ作成中ですと言われても納得するくらい現実味のあるデザインをしている。
月探査バギーでカーチェイスみたいなことしてるのはむしろ新しいなと思った。スターウォーズみたいな世界観の空中浮遊する乗り物でチェイスはSF映画ならどこでも見れそうだけど(トロンみたいなやつ)、科学館に展示されてそうな乗り物でバトルしてる絵面は新鮮だった。同時に、そんな乗り物で攻撃し合っている絵面にショックを受けていて、宇宙開発って平和の象徴みたいなもんだと思い込んでいた自分に気付かされた。人類が宇宙に進出したら、いずれは月の治安も悪くなるのは当然だろう。そんなふとした気づきに、なんとやく世界はどんどん良くなるだろうなと思っていた昔の幻想を否定されたときの気持ちを思い出すなどした。
シリアスの植え付け方がすごいよな、この作品。
そして宇宙ならではの映像美も素晴らしい。
冒頭の主人公落下シーンで、眼下に描かれる地球の美しさに引き込まれた。冒頭からやばかったんだ、この映画。
そして最後は地球に帰還して、人から手を差し伸べられて(孤独が終わりを告げて)ホッとするエンドなのだが、このとき「帰ってきたんだ…」と思った気持ちは、きっと主人公とリンクしていたと思う。心理状態の描き方マジで好きだなぁ…
重厚な映画なので気軽に「また観たいー!」とは言えない作品だけど、心に残った作品としては数えていいと思う。間違いなくこの3日間で見たやつのなかでは刺さった。文学的で良かった。
こんなん観ちゃったら次なにを観たらいいんでしょうね…