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日記、感想、オタ活・・・ごちゃまぜ雑多の物置蔵
寝台列車に乗って向かった先は島根県出雲市。
サンライズ出雲の話は前の記事に書いたので、今回はその続き。

2月16日㈫
事前に出雲市駅から出雲大社までの電車やバス路線は調べてあったものの、なんか思っていたより天気が良かったことでテンションが上がり、「レンタサイクルあります」の表示につられて自転車を借りた。海辺の強風、冬場の強風、寒さ、己の体力を考慮しない判断であった。実際、レンタサイクル受付のおっちゃんにも「寒いけど大丈夫ですか?」って心配された。

誤算はもう一つあって、それは出雲市駅から出雲大社まで実際どのくらい距離があるのかという知識がなかったこと。ガイドブックで見た簡易的なマップの記憶を頼りに走り出したものの、どれくらい漕げばいいのか全然わからないのは辛かった。レンタサイクルを推奨するだけあって自転車用の看板や道は整備されていたのだが、「いやもう十分漕いだでしょ…」ってときに「稲佐の浜あと6.9km」という表示はかなりこたえた。

そう、まず目指したのは稲佐の浜。浜の砂を出雲大社に持っていってどうにかするといい(超アバウト)ってガイドブックに書いてあったから。当然のことながら海に近づけば近づくほど風が強い。しかも結構遠い(後で調べたら出雲市駅から稲佐の浜まで11kmだった)。遠くに見える松林を越えたら海だろうと思って漕ぎ続けても、松林の先にさらに松林が見えたりする。
それでも心折れずに漕ぎ続けられたのは、見知らぬ土地で自分勝手に振る舞えることが嬉しかったから、だと思う。誰かとの旅行だったら絶対こんなキツイ選択しないもんね。冬の日本海側で風に向かって走るなどという強烈な経験、きっと焼き付くにちがいない…そう確信できるのが嬉しかった。

いよいよ海が近くなって、最後の坂を乗り越えたらいきなり比じゃない強風が吹きつけてきた。
もう寒さで鼻がマヒして潮の匂いすら分からない。
冬の日本海は荒れていた。大しけも大しけ。海の向こうから波の音がごうごう響いて押し寄せてくる。とはいえ浜に打ち寄せる波は常識的な大きさだ。自分が海に免疫ないから荒れているように見えるだけで、現地の人には平常むしろ穏やかくらいなのかもしれないなと思った。実際サーフィンしている人もいた。たしかに波に乗るにはいい風だと思う。
まぁでも、怖いと思った。
高い山に登って人間なんて簡単に吹き飛びそうな強風に感じた恐怖と一緒。遮るもののない水平線、あの遠い海上で人間が耐えられないくらいの暴風がふいて、高波がきて、飲まれてしまうかもしれない…そんな感じの、自然への畏怖がせり上がる。山も山で怖いけど、私は海の方が怖いなと思った。

砂が吹き付けてくる海沿いを漕ぎ、稲佐の浜で鳥居の刺さった岩を見て、砂を回収。ただし出雲大社に着くころにはこの砂の存在を完全に忘れており、結局自宅までただ浜の砂を持ち帰っただけになった。

出雲大社は広かった。でかい公園みたいだった。
自転車を置く場所を探してあっちこちうろうろしたのに疲れすぎて、神聖なものに感動する体力が残っていなかった。御神酒を買うのが好きなので、献酒一覧を眺めてメーカーをチェックした。社務所では御神酒を売っていないのかとがっかりしたけど、もしかして売っている方が異常なのかもしれない。諏訪大社くんのことですよ。
風の来ない場所を見つけて休憩。境内のあちこちにいるウサギの像が可愛かったな。

さて出雲大社を見たら門前町でご飯でも、と思っていたのだが、コロナ禍のせいで営業している店が本当に少ない。これは翌日の松江観光でも思い知ったのだが、このご時世、ガイドブックに載っているショップ情報は本当に役に立たない。特に飲食店。仕方ないとは思うのだが、たしかにこれじゃ普通の旅行は難しいよなぁと思わざるを得なかった。
こんなときだからこそ、あのお店あとで入ろうとかあとであれ買おうとか思っていると損をする。営業している店を見かけたらとりあえず飛び込んだ。なんとか昼食にありつけたし、食べたかった出雲そばが食べられたので本当に良かった。
ちなみにそばを注文して待っている間、ずっと体が揺れている感覚があった。陸酔いだと気付くのには時間がかかった。まだ寝台列車に乗っているような感覚と、あと自転車で風に煽られている時の不安定な感覚がある。ふわふわの相乗効果。不快じゃないけど不思議な感覚だった。

夜、松江のホテルに入ったらすーぐ眠気がやってきた。
出雲での一日が充実していて、サンライズ出雲に乗っていたことが本日の記憶だとは信じられなかった。もっと遠い日の話のような気がした。このホテル、夜食を出してくれることで人気らしいのだが、そんな時間まで起きていられるわけがなかったので、健康的に就寝した。


2月17日㈬
天気予報の通り、この日の松江は雪だった。
ありったけの防寒具を持ってきてよかったなと思った。

5分毎に雪と晴れを繰り返す厄介な天気。降ってきたらお店や観光場所に逃げ、ちょっとやりすごしてまた歩くの繰り返し。こんな天気だったからか観光客は数えるほどしかおらず、景色が撮り放題というのは嬉しかった。雪の松江は趣がありすぎる。
ここでもやはりほとんどのお店が休業しており、飲食はともかくお土産を探すのに苦労した。なんとか土産っぽいものは買えたけど、この苦労も土産話の一つになるといいな。

観光した場所は小泉八雲記念館(図書コーナーで円城塔が訳した小泉八雲の話を読めたのが嬉しかった)、小泉八雲旧居(雪の降る庭園は美しかったです)、松江城(階層が多い、貸し切り状態なのが一番面白かった)、興雲閣(喫茶コーナーで休憩している時間がエモくて興奮した)、くらい。あとは適当な勾玉ショップや和菓子屋さん。
いつ吹雪くとも分からない天候の中、松江大橋を渡るのは怖くて、周遊バスを使って移動した。1日乗車券があるのでおすすめ。歴史のある町なので、観光名所がけっこうあるなという印象。

電車が止まるのが怖かったので観光を早めに切り上げて帰宅。
特急やくも号で岡山に出て、岡山から名古屋まで新幹線。
この旅行で新旧列車を制覇したようなもんだね。
岡山から名古屋まで、列車じゃ一晩かけたっていうのに、新幹線は1~2時間。費用だってこの距離じゃ大差ないだろう。旅のどこに時間を割くか、何に旅情を感じるかはもう人それぞれの時代なんだなとか考えていた。新幹線は揺れが少ないから酔いにくいしね(空腹状態で特急やくも号乗って酔いかけた人)。でも私は車窓に憧れる気持ちも大好きだよ。


長々と駆け足で語りましたが、以上が旅の全貌です。
・現地の距離感、地形はちゃんと調べておくこと
・コロナ禍のガイドブックは役に立たない
・思い立ったら飛び込め
これが今回の教訓。やっぱり一人旅は行く価値があるし、心の栄養になる。これからも隙を見つけては"どこか"を旅したいものだね。
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