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失恋の話。
3月20日、人事異動が発表された。
先輩の名前があった。
栄転だと周囲は賛辞を呈する。
心にもない「おめでとうございます」を告げて、私は、どうしたら悔いが残らないかを考えた。
有能で、人当たりが良くて、仕事が好きで、かっこよくて、皆の人気者。
何回も小言を言われ、その度に凹んだけど、それを差し引いてもあり余るくらい好き。
これは好意の押し付けだ。
理想を勝手に投影してるだけだ。
そう思って気持ちに気づかないようにしていたが、いざ消えることが確定すると、寂しさが圧倒的に勝る。この先、先輩は私の知らない部署で私の知らない人たちと生き生きと仕事するんだろうな、もう手の届かない人になるんだろうな、あぁ、嫌だなぁ・・・。
友人に相談した。
「じゃあもう、ヤケクソで告白しちゃえば? ほら、バスケの試合中は正確にパスをつなげて得点することが重要だけど、試合時間残り3秒になったらコートのどこからだろうが一縷の望みをかけてスリーポイントシュートぶん投げるのが正解じゃん? もう残り時間が無いのなら、成功したらいいな~くらいの気持ちでヤケクソ勝負していいと思うけどね」
そりゃそうだ。
告白を決意した。体裁なんて知るものか。私のヤケクソ起爆力をなめるなよ。
ちなみに現在進行形で仕事は死ぬほど溜まってる。年度末の業務量マジでバグってる。
これは4/1が近づけば近づくほど深刻になる。
だから3/31に告白なんて余裕は絶対ない。かといって週の半ばとか訳の分からんタイミングでやりたくもない。というかあと1週間以上も「告白するぞ~」みたいな感じで腹に一物隠しておくなんて精神的負担がでかすぎる。決意したなら、とっとと実行したい。
というわけで3/24(金)の昼休憩時間に凸することにした。
(後日談)
友人「昼休憩は馬鹿だろ・・・。フラれても午後気まずいし、OKだったらOKだったで浮かれて仕事にならんくね??どうせ残業するんだから夜にするだろ普通・・・」
私「いやたしかにOKされた場合のことは考えてなかったんだけど、フラれても割り切って午後も仕事する覚悟は決めてたし、やりきった。なんなら平然と先輩に質問しにいった。めちゃめちゃいつも通りだった。それに、この日は先輩は飲み会かなんかでさっさと帰るスケジュール入れてたし、先輩の昼休憩ルーティーンは把握してるから一人になる時間に凸できる可能性が高かったし、先輩は月曜日休み取ってたから万が一気まずくても3日間顔合わせなくて済むし・・・このタイミングが一番だったんだよ」
友人「かなり理詰めのヤケクソでウケる」
決行日前夜、まず手紙とお菓子を用意した。
お菓子は異動発表前に「先輩絶対異動になるし菓子折り買っておこう・・・買っておくことで未来に対処して気持ちの安定をはかるのだ・・・」というプッチ神父的思考(???)で調達してきたもの。手紙は、恋愛うんぬん差し置いて先輩には新人の頃からずっとお世話になってきたので、感謝の気持ちを要点しぼってまとめて書いた。
想いも伝える、感謝も伝える、どっちもやる。
そして神に祈った。
ちょうど「神様は道は開いてくれるけど、進むのは自分だよ」って言葉を目にしたからだ。3/24(金)の当初天気予報は曇りだった。私は病的に晴れが好きなので、少しでも青空が見えたら勇気をもらえるだろうなと思った。「明日、昼休憩の時間にちょうど先輩が一人で喫煙所にいて少しでも青空が見えるシチュエーションに出会えますように。そうなったら、私は絶対に覚悟決めて踏み出すので!!」
果たして神様は、過分なまでに願いを聞き届けた。
初夏のような快晴。満開になった桜。心が軽くなるような温かい風。雨上がりの土の匂い。
青空と桜の色彩に背中を押され、覚悟を決めて飛び出した。
まずお菓子と手紙が入った袋を渡して。
それからもう一つ伝えたいことがありますと前置きして。
私が絞り出す言葉を待ってくれているのがよく分かった。
微笑みが残酷なほどやさしいなと思った。
告げた後の「ありがとうございます」がとても冷静で、そのトーンで結果が分かった。
いろいろとありがたいことを言ってくれたけど、あんまり覚えてない。
ただ、自分がダメージ受けているのを意外に感じていた。
泣きそうになるくらいには、結構本気で好きだったんだなあ。
喫煙所をあとにして散歩に出かけた。午後にはメンタルを整える覚悟があったとはいえ、直後くらい気まぐれに散歩してもいいだろうと思った。何より、春めいた世界を感じていたかった。
胸は痛いし苦しいが、吹っ切れてもいた。
息を吸う度に、胸を爽やかな風が駆け抜けていく。
桜と新緑と青空を目に焼き付けながら、泣き笑いした。
今日の世界は鮮やかで、私の感性もきっと研ぎ澄まされている。
今なら何より美しい写真が撮れるなと思ってスマホを出した。
今考えても、もちろん失恋は辛いことだけど、あの先輩とそんな話ができた瞬間があったことに、少しばかり幸福を感じる。告白した一瞬だけは、先輩は仕事関係なく私の話を真っ直ぐに聞いてくれた。私の本音を聞いてくれた。そしてやさしくはっきりと断った。爽やかな結果だなと思うのは、ちょっと美化しすぎだろうか。
さて、人生を生き直そう。
3月20日、人事異動が発表された。
先輩の名前があった。
栄転だと周囲は賛辞を呈する。
心にもない「おめでとうございます」を告げて、私は、どうしたら悔いが残らないかを考えた。
有能で、人当たりが良くて、仕事が好きで、かっこよくて、皆の人気者。
何回も小言を言われ、その度に凹んだけど、それを差し引いてもあり余るくらい好き。
これは好意の押し付けだ。
理想を勝手に投影してるだけだ。
そう思って気持ちに気づかないようにしていたが、いざ消えることが確定すると、寂しさが圧倒的に勝る。この先、先輩は私の知らない部署で私の知らない人たちと生き生きと仕事するんだろうな、もう手の届かない人になるんだろうな、あぁ、嫌だなぁ・・・。
友人に相談した。
「じゃあもう、ヤケクソで告白しちゃえば? ほら、バスケの試合中は正確にパスをつなげて得点することが重要だけど、試合時間残り3秒になったらコートのどこからだろうが一縷の望みをかけてスリーポイントシュートぶん投げるのが正解じゃん? もう残り時間が無いのなら、成功したらいいな~くらいの気持ちでヤケクソ勝負していいと思うけどね」
そりゃそうだ。
告白を決意した。体裁なんて知るものか。私のヤケクソ起爆力をなめるなよ。
ちなみに現在進行形で仕事は死ぬほど溜まってる。年度末の業務量マジでバグってる。
これは4/1が近づけば近づくほど深刻になる。
だから3/31に告白なんて余裕は絶対ない。かといって週の半ばとか訳の分からんタイミングでやりたくもない。というかあと1週間以上も「告白するぞ~」みたいな感じで腹に一物隠しておくなんて精神的負担がでかすぎる。決意したなら、とっとと実行したい。
というわけで3/24(金)の昼休憩時間に凸することにした。
(後日談)
友人「昼休憩は馬鹿だろ・・・。フラれても午後気まずいし、OKだったらOKだったで浮かれて仕事にならんくね??どうせ残業するんだから夜にするだろ普通・・・」
私「いやたしかにOKされた場合のことは考えてなかったんだけど、フラれても割り切って午後も仕事する覚悟は決めてたし、やりきった。なんなら平然と先輩に質問しにいった。めちゃめちゃいつも通りだった。それに、この日は先輩は飲み会かなんかでさっさと帰るスケジュール入れてたし、先輩の昼休憩ルーティーンは把握してるから一人になる時間に凸できる可能性が高かったし、先輩は月曜日休み取ってたから万が一気まずくても3日間顔合わせなくて済むし・・・このタイミングが一番だったんだよ」
友人「かなり理詰めのヤケクソでウケる」
決行日前夜、まず手紙とお菓子を用意した。
お菓子は異動発表前に「先輩絶対異動になるし菓子折り買っておこう・・・買っておくことで未来に対処して気持ちの安定をはかるのだ・・・」というプッチ神父的思考(???)で調達してきたもの。手紙は、恋愛うんぬん差し置いて先輩には新人の頃からずっとお世話になってきたので、感謝の気持ちを要点しぼってまとめて書いた。
想いも伝える、感謝も伝える、どっちもやる。
そして神に祈った。
ちょうど「神様は道は開いてくれるけど、進むのは自分だよ」って言葉を目にしたからだ。3/24(金)の当初天気予報は曇りだった。私は病的に晴れが好きなので、少しでも青空が見えたら勇気をもらえるだろうなと思った。「明日、昼休憩の時間にちょうど先輩が一人で喫煙所にいて少しでも青空が見えるシチュエーションに出会えますように。そうなったら、私は絶対に覚悟決めて踏み出すので!!」
果たして神様は、過分なまでに願いを聞き届けた。
初夏のような快晴。満開になった桜。心が軽くなるような温かい風。雨上がりの土の匂い。
青空と桜の色彩に背中を押され、覚悟を決めて飛び出した。
まずお菓子と手紙が入った袋を渡して。
それからもう一つ伝えたいことがありますと前置きして。
私が絞り出す言葉を待ってくれているのがよく分かった。
微笑みが残酷なほどやさしいなと思った。
告げた後の「ありがとうございます」がとても冷静で、そのトーンで結果が分かった。
いろいろとありがたいことを言ってくれたけど、あんまり覚えてない。
ただ、自分がダメージ受けているのを意外に感じていた。
泣きそうになるくらいには、結構本気で好きだったんだなあ。
喫煙所をあとにして散歩に出かけた。午後にはメンタルを整える覚悟があったとはいえ、直後くらい気まぐれに散歩してもいいだろうと思った。何より、春めいた世界を感じていたかった。
胸は痛いし苦しいが、吹っ切れてもいた。
息を吸う度に、胸を爽やかな風が駆け抜けていく。
桜と新緑と青空を目に焼き付けながら、泣き笑いした。
今日の世界は鮮やかで、私の感性もきっと研ぎ澄まされている。
今なら何より美しい写真が撮れるなと思ってスマホを出した。
今考えても、もちろん失恋は辛いことだけど、あの先輩とそんな話ができた瞬間があったことに、少しばかり幸福を感じる。告白した一瞬だけは、先輩は仕事関係なく私の話を真っ直ぐに聞いてくれた。私の本音を聞いてくれた。そしてやさしくはっきりと断った。爽やかな結果だなと思うのは、ちょっと美化しすぎだろうか。
さて、人生を生き直そう。
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