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信州は上田を中心とした友人との二人旅行。
その備忘録として日記を残す。
1日目、新幹線を乗り継いで上田で合流した。
北陸新幹線に乗るのも、グリーン車に乗るのも、新幹線で東京より遠い場所に行くのも初めてだったので、ドキドキしたし、たった半日でこれだけの距離を移動できることに驚いた。
土曜日で夏休み期間ということもあり、私が乗った北陸新幹線は指定席すべて完売という盛況っぷりだった。殆どの乗客は軽井沢で降りた。景色は地元からずーっと曇天で、軽井沢もすっきり晴れていれば素晴らしいアクティビティが楽しめただろうに、お互いついてないですねなんて勝手に思っていた。だが、軽井沢のトンネルを抜けた途端、天気は一転。雲は薄くなるわ青空が見えるわで、先程までの曇天は山の向こうに置いてかれた雲だったんだなということがよくわかった。さすがに笑った。幸先が良いにも程があるだろ。
上田は暑かったが、上田城に歩いて行くことはできた。
昼食は上田城の近くでお蕎麦。今回信州に行くにあたり、目標としていたのが「くるみそばを食べること」だった。くるみのペーストをざるそばのつゆに溶かしたもので、上司におすすめされて以来、ずっと食べたいと思っていた。上田の蕎麦は細麺で柔らかめ、そうめんみたいに透明度が高かった。そんな蕎麦に、くるみペーストのつゆが、めちゃくちゃ合う。冗談抜きでここ1か月で食べた何よりも美味いと思った。くるみのコク、うまみ、めんつゆの塩味、ペースト(味噌と砂糖か何かを和えている?)の甘み、それらすべてが一体化して蕎麦のつるんとした食感に集約される。食べやすい上に美味い、最高。感動しすぎておみやげコーナーでくるみ胡麻和えの瓶を買った。これで家でもくるみそばが食べられる。ここだけで上田に来た甲斐があったと喜んだ。
その後、街ブラして、適当に入った喫茶店が思いの外レトロで静かで良い雰囲気だった。外の喧騒が遠くなる静かで薄暗い店内、革張りのソファ、グラスを磨く店主、カウンターで話し続ける常連さんたち、ほんのり漂うたばこの匂い・・・メロンソーダフロートを飲みながら、「こういうのがいいんだよ・・・」と雰囲気を噛みしめていた。オープンで明るくて賑やかで華やかなお店もいいけれど、また来たいと思えるのはこういう店だ。
2日目、レンタカーを借りて遠出した。
レンタカーを利用するのが初めてで「事前予約する」という概念がすっぽ抜けており、前日の夜に初めて「もしかして予約してないと利用できないもの??」と気付いた。さすがに前日の夜中にネット上で予約は出来ず、仕方がないので朝イチで直接電話。すると「ご用意できます」とのことだったので、お店の人と奇跡に感謝した。本当にありがとう。
目的地は北八ヶ岳。上田からは車をかっ飛ばしても1時間はかかる。我ながら上田を拠点にしているとは思えない目的地だとは思うが、ロープウェイを利用した標高高めの登山がどうしてもやりたかったんだから仕方ない。自分一人が楽しむだけの登山だったらもっと近くの山でも良かったかもしれないが、今回ついてきてくれる友人にはぜひ、森林限界の世界を歩く楽しさを知ってもらいたかった。「山の上にこんな幻想的な世界がある」ってことを知って欲しかった。ロープウェイはどうしても譲れなかったんだ。
快晴とは言い難い天候だったものの、雨には降られず、時々晴れ間が見えるくらいの、日光に邪魔されない、登山に適した天気だった。ロープウェイ到着駅から片道1時間30分程度の本当にささいな登山だったけど、「登るのは大変だったけど、楽しかった」と言って貰えただけで、今回の旅行は個人的大成功だったなと思う。私はというと、ホテル隔離期間中、外の空気が吸えなかったのがずっと嫌だった反動で、登山中は「空気がうまい」ばかり言っていた。だって本当にうまいんだもん。標高が高い世界の空気は、切なくなるほどうまい。
上田への帰路、レンタカーで夕立があったであろう地域を横切った。道路は濡れ、山の麓からは霧が立ち上っている。周囲は田んぼだらけの開けた土地だった。友人は登山が疲れたのか、助手席で寝ていた。この子が底抜けの晴れ女であるお陰で、私たちは雨に降られることなく今日も楽しむことができたんだろうなぁなんて考えていた。雲が切れて西日が射す。山の麓にくっきりと虹が現れ、運転中だというのに目を奪われた。虹の端から端まではっきり投影されている。それは「虹の麓には宝が眠っている」ってお話を信じたくなるほど幻想的で、でも車を停めて写真を撮る訳にはいかなくて(レンタカーの返却時間が迫っていたので)、ただ横目で見て焼き付けるしかなかった。ラジオもつけていない静かな車内で息をのんだ。その瞬間のことを鮮明に覚えている。
3日目、遅くならないうちに帰ることしか考えていなかった。まさにノープラン。
とりあえず帰りの新幹線の切符は用意したものの、出発時刻まで暇になった。
何をしようか考えながら駅前をフラフラして、偶然見かけた「信濃国分寺」の写真を見て近そうだし行ってみようかと思い立って、経路を調べたらちょうどバスの時間が数分後。バスに乗ってたどり着いたお寺は想像以上に広くて手入れが行き届いていて清浄で、偶然にも今日は境内にある三重塔の内部公開日(しかも中に入れる)で、境内や裏手の畑にたくさん咲いている蓮の花の見頃でもあり、鐘楼も塔に登って鳴らしてOKの日で、「いや盛りすぎでは???」と軽く混乱した。
その上、境内には人はまばら、蓮の畑を見に来ている人も全然いない。いやいや、その辺のひまわり畑には呼ばなくても人間がワラワラと集まるのに・・・。いくら月曜日だからって、このレベルのお寺が「穴場」だなんて信じられなかった。でもその地元にのみ見守られている感が「尊い」とも思う。紹介したいけど人に教えたくないお寺ナンバーワン・・・!!
この信濃国分寺で最初に感じたのが、「梵字を使っているお寺って珍しいな」だった。国分寺という歴史の重みが、そんじょそこらの寺社仏閣とは格が違うことを物語っているのだろうか。歴史のことはよくわからないが、異国情緒(しかも1200年モノ)を感じられる独特な雰囲気に「こういうの好きー!」と思わずにはいられない。普段寺社仏閣に行っても御守り等は買わないようにしているのだが、信濃国分寺にはありがたい思いをさせてもらったし、なによりお札が独特で記念に欲しいなと思ったので買った。購入する時に住職さんらしき人がサンスクリット語っぽい呪文をかけてくれたのが嬉しかった。御祈祷みたいで。やはりこの国分寺、節々にインドやシルクロードを感じる・・・。
あと単純に景色が最高だった。夏の強い日差しと青い空、これほどものを撮るのに適した時節が他にあるだろうか。蓮の花の華やかさも、社殿の荘厳さも、夏というフィルターが魅力を何倍にも増幅させてくれる。とにかく写真を撮るのが楽しかった。カメラロールは宝物でいっぱいだ。
北陸新幹線の帰り道、「どうせなら人生で一回は高い席に乗ってみたい」と、グリーン車より上のグランクラスを購入。たしかに広いし静かだし座席も多機能だったのだが、あまりにもリラックスした姿勢に座席が傾くため、列車内とは思えなくなり、脳がバグって列車の揺れに酔った。課金したら酔うなんて貧弱すぎるが、庶民には合わないものだったんだろうな。今後は買うならグリーン車までで十分だと心に誓った。
そんなこんなで自由気ままな3日間を過ごし、今に至る。
やりたいことをやりつくした、これ以上ないくらい自由な旅だった。数日前までホテル隔離生活を送っていたせいもあり、自由に動き回れることが本当に楽しかった。今後も体力が続く限り楽しみたいから、健康でいよう、体力をつけようと思った。そして一人じゃできないこと、楽しめないことも多々あったと思う。付き合ってくれた、一緒に楽しんでくれた友人に感謝を。そしてまたいつか同じように旅行しよう。
「あれは本当に良かったなぁ」と噛みしめるような思い出がいっぱいの素敵な旅行。
思い出を胸に、これからも楽しく生きていこう。