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日記、感想、オタ活・・・ごちゃまぜ雑多の物置蔵
寒くなると外に出かけたいという気力が落ちるもの。夏の頃は全然集中できなかった読書に向き合ってみようかなあ、なんて転機が訪れる瞬間があります。そういうわけで書店に出かけ、当然のように新刊コーナーをスルーして人気のないSFコーナーに到達し、ざっと背表紙を吟味。
 そのときちょうど目線の位置にあったのが『銀河ヒッチハイク・ガイド』でした。

 これが『宇宙を渡って』とか『<黄金の心>号の旅』とか『地球の終わり』とかだったら、私は決してこの本を手に取ることはなかったと思います。それくらいの引力を持って、今回はタイトルに惹かれました。この漢字と外来語をとってつけたような奇妙なダサさがそれはそれは気に入って(原作は70年代の英国ラジオドラマらしいので、ダサさを狙ってつけたタイトルではないとは思いますが)、背面のあらすじもなかなか面白そう、よし買うか、と。

 背面のあらすじにはこうあります、「シュールでブラック、途方もなくばかばかしいSFコメディ大傑作!」――基本的にその通りです。これが読みたかった。私が求めているのは、宇宙へのロマンでも、科学に忠実な空想科学トリックでも、常軌を逸した世界観や生態系でもなかったんですよ。あまりの展開に主人公が呆れ、読者が鼻で笑うような冗談を真顔で言うような小説。それが何故かSFジャンルと相性が良かったもんで、SFを漁っていれば見つかるかもしれないと思っていた、それだけのことだったみたいです。

 何が言いたいかというと、この本、とても好みでした。


 この本のノリが不真面目だということはお判りいただけたと思うので、あとはもう読みながら思ったことをつらつら書いていこうと思います。普通にネタバレします。


・作風について
 全体的に突飛でドタバタで愉快なノリがあります。本書は地球が滅ぼされて生き残ってしまった英国人が主人公?なのですが、まぁ滅ぼされる原因も酷ければ過程も酷い。宇宙高速道路の建設に地球が邪魔だから滅ぼす、しかし建設する方は建設することは絶対善だと思っている。この理由は風刺的というかブラックジョークじみていますが、そこ以外はいたって愉快なコントでした。随所に皮肉がきいていて、読んでいて鼻で笑うこと多数。
 個人的に一番笑ったのは、宇宙船で移動する主人公たちがとある星に着陸しようとした時、その星の防衛機能が出したミサイルに撃ち落されそうになり、それぞれが宇宙船のあらゆる機能を引っ張り出してどうにかミサイル回避しようとする場面ですかね。急発進したりぐるりと天地逆転したりと、しっちゃかめっちゃかになる宇宙船がなぜか鮮明に想像できて、職場で休憩中に読んでいたのに笑いそうになりました。
 装飾性をとっぱらい、あくまで「淡々と記述」しているところが余計に笑いを誘うんですよね。こういう笑いに弱いんですよね私。今まで真顔で冗談を吐くような小説は円城塔の著書しか知らなかったのですが、そうかイギリスコメディも漁ればいいのか、とひらめきを得た気分です。参考にします。


・「ファイアボール」との関連について
 「イルカが地球上で2番目に賢い生命」という話が作中に出てくるのですが、これ、似たようなことを「ファイアボール」の中でも言ってるんですよ。「ファイアボール」は国内のディズニースタジオが作った短編アニメです。SFファンがマニアックなネタを詰め込んで作った側面があり、元ネタがいろいろあるのは知っていたのですが、いざ対面するのは初めてだったので「これが元ネタか!!!!」と胸の内が熱くなるような感動を覚えました。SF内輪ネタとでもいうべき崇高な世界に自分も一歩踏み入ることができたような、オタクっぽい優越感。
 そういえば「黄金のこころ」というサブタイトルも「ファイアボール」で使われていた気がします。あとで見返す、このためにディズニープラス加入してんのよ…(大嘘)

※と思ったら現在ディズニープラスでファイアボール視聴できないじゃないですか!!!悲しくなったのでニコ動にある無断転載ファイアボール3期(2話のサブタイトルが「黄金のこころ」)を載せておきます。


・キャラクターたちと今後について
 読み終わるのが寂しいなと思う小説は、登場人物に愛着が湧くものです。キャラ愛で生きてきたオタクだからそう思うだけなのかもしれないですけど。一応の主人公、地球人のアーサーはニュートラルな存在だから置いておくとして、彼の親友フォードは不思議君な性格かと思えば最終的にはツッコミ役だし、元大統領ゼイフォードはアホそうに見えるけど魅力的な秘密を抱えているし、ゼイフォードの恋人トリリアンはチームの良心だし、ロボットのマーヴィンとかエディとかは人間以上に個性的な性格をしているし……登場人物のキャラが立っているというか、役割と性格がいい感じに分裂していてわかりやすい。あと多すぎない。それがいい。
 愛着を持って読んでいたので、本書を読み終え、続編があと4冊もあることを知って喜びました。「1冊で完結しないのかよ」という文句がないではないですが、まだしばらくこの世界観に浸かれる喜びには代え難いですからね。


・「銀河ヒッチハイク・ガイド」について
 銀河ヒッチハイク・ガイドというのは本書におけるキーアイテムで、宇宙でそれなりに読まれているガイドブックを指すようです。特徴は『「パニクるな」とカバーに書いてある』こと。…わかる、旅において一番肝心なのはパニックにならないことだ。以上。


 総評、面白かった。
 感想を書くのが久々で、かつ満足に言語化もできていない状態でブログにしてしまって申し訳ない気持ちがあります。でも気持ちが熱いうちに語らないとさ!冷めるじゃん! こんな拙い感想ですが、最後まで読んでくださりありがとうございました。セリフが多くて読みやすい小説ですので、活字が得意じゃない人にこそおすすめです。

 さ、続編をポチるぞ~
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