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日記、感想、オタ活・・・ごちゃまぜ雑多の物置蔵
 唐突に登山がしたくなって、車で行ける範囲で面白そうな山を選び、その翌日、朝から登りに行った。登山装備は前日に揃えたが、山行ルートは当日ヤマレコで検索して適当に決めた。

 車を出発して30分。既に道が分からなくなった。整備された登山道だから適当に歩いていけばわかるだろうと、慢心していたことを思い知る。登山者っぽい装備の人達はみんな右の道を進んでいるが、私のスマホは左の川沿いに進めと指し示していた。たぶん行き先が違うからルートが異なるのは当然なのだが、問題はスマホが示す先に道がない、ということだった。


 GPS機能をフル活用してそれっぽい方向に彷徨い、「これは道か???いや踏み固められてはいるけどさ…」と思い続けながら歩いた。途中「⬆鎌ヶ岳」と書いてある看板があり、たしかに私のいる場所は登山道の一部ではあるのだとわかったが、それにしてももう何年誰も通ってないんだよ…という潜み具合だった。
 
 歩く先は、道というより山。目印らしきカラーテープを頼りに、かろうじて道だろうなと思える場所を登り続ける。登山はこういう急登がいちばんきつい。尾根に出てしまえば登山道も方角も明白だし体力的な辛さも和らぐが、疑心暗鬼になりながら斜面を必死で登るというのは、精神的にも体力的にもかなりきつい。
 滑落しないように、なるべく木の根元(根が土を固定しているので地滑りしにくい)を踏んでいく。いつ足を滑らせても体を支えられるように、木の幹や岩を握って登っていく。登山用の手袋が、今日ほど頼もしく思えたことはない。

 角度はかなり急で、しかも私以外に登山者がいるとは思えないほぼ廃道。滑落したら誰にも見つけてもらえないんだろうなと思うとゾッとして、改めて自分がいかに無謀なことをしているのかと考えた。それでも登り続けてしまうのは、なんでだろうな。登山がやりたくてやってるんだから、“進むのが不可能”ならまだしも、“たぶんちゃんと進めている”状態で止めるほうが難しいといものじゃないだろうか。

 あとプラスに捉えられた理由はこんなところだと思う。
・自分以外このルートを使ってる人がいない!景色も登山道も独り占め!状態が楽しかった
・子どもの頃、山で遊んでいた経験(道がない山の歩き方とか)が活きてるみたいで楽しかった
・帰り道は違うルートになるので、この急登が1回きりの通り道だからこそ許せるところがあった

 ソロ登山は格別だと思う。
 もちろん事故った時に発見される確率が低いので、あんまりおすすめされない世界なのはわかる。私だって友達がソロで登るって言い出したら、よほどその子のスキルが信用できない限りは止める。それでも、1人で無心で登ることは、誰かのペースに気を配らなくて済むし、自分の好きな時に立ち止まれるし、いつの間にか自分と向き合うことになる……そういう世界を知ってしまうと、案外ソロで登ることが娯楽になってしまう。この楽しさは周囲に人がいなければいないほど深くなる。
 
 登りながら、ソロ登山とはちょっと違うけど、1人でやばいルートで登る人を描いた「バリ山行」(著:松永K三蔵)のことを思い出していた。正規の登山道を無視して、あえてとんでもないところから登山する「バリ」。今日の私のルートはほぼバリかもしれないと思いながら、「バリはソロじゃなきゃ」という作中のセリフに共感していた。自分だけで、道を探し、登り方を考え、自分のことだけを考えて進む…。世俗から離れて登山にだけ没頭できているみたいで、気持ちがいいんだよな。
 
 今日は天気が良く、青空を背景に周囲の山脈がくっきりと見えた。登山道は険しかったが新緑と岩と野の花の色彩が鮮やかで美しく、見渡す限り自分と自然しかない世界で、なんて贅沢な登山なんだと噛み締めながら歩いた。


 そんなわけで急登を抜けて尾根を通り、さらに滑落したらやばそうなガレ場を登り、鎌ヶ岳の山頂に着いた。
 山頂はメジャーなルートから登ってきた人たちでそこそこ賑わっていた。登路では全然誰ともすれ違わなかったので、人気のない山なのかと思っていたが、次から次へと山頂に人が来て面食らう。

 山頂は狭くて長居すると迷惑だったので、休憩もそこそこに出発した。ここから縦走して御在所に登り、帰りはロープウェイでスタート地点に戻るというのが今回のルート。鎌ヶ岳〜御在所はメジャーなルートだそうで、ここからは多くの登山客に出会った。

 鎌ヶ岳と御在所は岩の性質?が脆く、登山道も砕けた岩や砂(ガレ場)が多い。つまり滑りやすい。富士山の斜面みたいに砂利まみれって感じ。滑落との戦いは山を下るときのほうが大変になる。ガレ場に足を取られないように、みんなおっかなびっくり下っていた。
 私も本日の初危険場面がこの下りだったらおっかなびっくり降りていたと思う。だが、そもそも道がどうか怪しい急登で、掴んだ岩が剥がれかけたり、マムシに遭遇したり、落ちないよう祈りながら渡ったりしてきた経験から、鎌ヶ岳から降りる程度の難易度では動じないほど腹が据わっていた。岩や木の枝を掴み、道に対して斜めに体重をかけることで滑りやすさを殺す。はたから見たら別に特段速く降りてたわけではないかもしれないが、自分史上いちばんスムーズに下山できた気がした。ストックもない(そもそも手袋しか持ってきていない)身軽な装備で、これから鎌ヶ岳に登る人達の間を縫ってすいすい下山する。これがまた、なんだが自分に登山スキルがそこそこあるように感じられて嬉しかったんだよな。(慢心のもと)


 そうこうして、無事に御在所に到着し、さすがに疲れたので写真もろくに撮らずとっととロープウェイに乗った。登山のあとはご飯よりも温泉に入りたい派なので、ロープウェイ駅付近の日帰り温泉に早速行った。幸せだった。ロープウェイ駅で売っていた「大石焼き」という堅焼きが意外とおいしくて(山椒の葉が効いてて独特な味。山椒好きには堪らない)、追加で5枚くらい買った。食べながら帰り道を運転した。

 運動したい!登山したい!っていう願望を叶えるには十分すぎる1日だった。無謀なところもあったけど、まぁ無事に帰れたので良かったなと思う。これに慢心せず、事前準備やアプリの使い方は今後もっと学ばないといけないけど。
 また来月もどこかに登れたら、幸せだろうな。
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